「緊急地震速報」について

「緊急地震速報」とは、地震発生による大きな揺れが到達する前に各地に大きな揺れが到達する時刻や、各地の揺れの大きさなどを推定して事前に知らせる情報です。

地震の発生とともに、P波(初期微動)と言われる比較的弱い縦揺れ(秒速約7キロ)と、S波(主要動)と言われる強い横揺れ(秒速約4キロ)が発生します。
日本全国に置かれた気象庁の「地震計」がこのP波を感知して、地震の規模(マグニチュード)、震源地、各地の到達震度などを推定し、それをラジオ・テレビなどマスコミ各社、速報データ配信会社、それに交通機関や、大規模集客施設、ビル管理会社などに伝達します。

地震が起きてからこのシステムが動き出しますので、地震情報の解析に要する時間などから、揺れが到達した後に情報が届くことがあります。

つまり、震源地の近くでは間に合いません。
大きな揺れが到達する前に、この情報を身の安全の確保やエレベーターの制御、電車の減速などに利用することにより地震被害を防いだり、軽減することが期待されています。

これまでの例を見ますと、かなり大きな地震でも、家の倒壊や死傷者が多く出る震源から近いところにはこの「緊急地震速報」の伝達は間に合っていません。
また、時間との勝負で、「地震計」からの限られたデータで地震の強さなどを推定しますので、誤差が出てきます。
これまでの例では、気象庁が発表した「推定最大震度」が通常でも プラスマイナス1~2の誤差があり、場合によっては「推定震度5強」で実際の揺れは「震度1以下」というケースもありました。

「緊急地震速報」が伝えられることによって、考えられるメリット

建物の中では・・・
揺れが来る前の時間に、上から落ちてくるものや、倒れてくる家具から、とっさにテーブルの下に隠れるなど、身を守ることができます。
ビルの中では・・・
揺れが来る前にエレベーターを近くの階に止めることによって、閉じ込め事故を減らすことができます。
屋外では・・・
危ない場所(自販機やブロック塀の近く、崖の下、上から物が落ちてきそうな場所、など)からすみやかに離れることによって、身を守ることができます。
デパート、地下街など人が多く集まる場所では・・・
危険物の売り場、倒れてくるものがある場所から避けることができます。
電車に乗っているときは・・・
運転士が指令を受けて減速することによって、停止しなくても高速運転中に比べ、事故が起こらない、又は被害が少なく済みます。
車を運転中では・・・
減速することによって、停止しなくても高速運転中に比べ、事故が起こらない、又は被害が少なく済みます。

「緊急地震速報」は、どんな地震でも揺れる前に情報が届けられ、正しく揺れの大きさがわかるオールマイティの情報ではありません。秒を争う短い時間にデータを処理し伝達することは、おのずから限界があります。

1.伝達時間の限界
「緊急地震速報」は、全国に約1000箇所に設置された地震計のうち、震源に近い地震計で感じた地震波を解析し、地震の規模(マグニチュード)、震源、各地の到達震度を推定します。
このうち、1箇所の地震計では、落雷や近くの発破、大きな動物の移動などの揺れを地震と間違えてデータを送ることがあります。これを防ぐために、気象庁では2箇所以上の地震計が感じた地震のみを速報として伝達することにしています。この2箇所以上の揺れを感知して「緊急地震速報」を発するまでに、これまでの試験運用では平均7秒程度の時間を要しています。
更に、これをラジオ・テレビで放送するためには、解析するために約3秒の時間が必要です。合わせて、平均的には10秒程度の時間が必要です。地震の強い揺れ(S波 主要動)が伝わる速度は地質にもよりますが秒速約4キロですので、震源地から半径40キロ以内では「緊急地震速報」は間に合わないことになります。
これと反対に、震源から離れるほど「緊急地震速報」伝達後の猶予時間は長くなりますが、揺れは小さくなり「緊急地震速報」が地震災害の軽減には役に立たないことになります。
2.推定震度の誤差・誤報
「緊急地震速報」は、既に「地震が起きた」という「事実」と、その揺れが「どのくらいの強さで伝わるか」という「推測」の二つが合わされた「速報」です。
上の項で、2箇所以上の地震計で感知した時発せられるとしましたが、この時点では絶対的にデータ不足です。
しかし、データがより多く入るのを待って、地震発生から60秒後に「緊急地震速報」が出されたのでは強い揺れで被害が起きそうな場所では、既に揺れがおさまっているかも知れません。ですから、少ないデータで「速報」を出さざるを得ません。 そうすると、現状では、ある程度の誤差があるのはやむを得ません。将来的には、地震計の数を増やしたり、コンピューターの解析性能を上げるなどによって、少しづつ改善されることはあるでしょう。
なお、これまでの「試験運用」でのデータでは、予測震度と実際の震度が一致したケースが37%、これを含む震度が上下1階級以内のときが83%で、17%が「はずれ」でした。
もう一つ、気象庁のコンピューターが短時間にデータを処理し、回線を伝ってそれぞれの機関に伝達、それを放送局で自動放送システムに載せるまでの間に「誤作動」の可能性もあります。時間的余裕があれば未然に防ぐとこと可能ですが、秒単位での処理・伝達ですので、「誤報」ということも考えられます。