998話(2015年5月16日 ON AIR)
「ミス・パラレルワールド」

作・ナカタアカネ

  
 

ハードボイルドな音楽が流れてくる。
ヒールでカツカツとした走り抜ける音と、追う靴音。

  

「もう、そこまでだ・・・観念してそれを渡すんだ。」

「それは出来ないわ・・・これを渡してしまうと、取り返しがつかない。」

「オレは、女を撃つ主義じゃないんだ・・・早くそれを・・・」

「じゃ、これでどう?」

  

(キーボードを叩きながら)そう言って、ミス・パラレルワールドが、ガータベルトから、すかさずブローニングを取り出し銃口を男に向けてこう言った。

  

「死にたくなければ、3つ数えて」

  

(キーボードを打ちながら)この暗黒街に銃声が鳴り響く。
果たして、これは両者どちらの銃声なのか。
ミス・パラレルワールドの運命や、いかに!
・・・どうかな、なかなかいけるんじゃないかな・・・たぶん。

ダメよ、そんなの。

ええ・・・そうかなあ・・・うーん、やっぱり・・・え!?

・・・何よ、急に大きな声出してびっくりするじゃないの。

それ、こっちのセリフ・・・っていうか、君は誰!?

何言ってるの・・・私、ミス・パラレルワールド。

は・・・ちょっと、ぶってみて。

え?

早く。

  
 

頬を叩く音が聞こえる。

  

いてっ・・・なに、夢じゃない。君・・・ミス・パラレルワールドが、何故ここに?

文句言いに来たの。

え?

なんか・・・最近の展開心配で。
最初は、近未来のSF小説っていう意気込みで出発したんでしょ、この小説。

う、うん。

それが、いつの間にか舞台が日本からアメリカになってない?
で、近未来のはずがなんかどう考えても、時間さかのぼってるのよ。

1940年・・・。

えっ、2050年だったわよね、時代設定。

いや・・・そこは・・・ミス・パラレルワールドが時をかけて・・・ね!

ね!じゃないわよ・・・いつ、そんな描写あった?
で、3つ数えてとか・・・何、いつか何処かで聞いたようなフレーズ。

ばれた・・・「三つ数えろ」って映画・・・ハンフリー・ボガードのサスペンス・・・。

何よ・・・それ、男が主人公だし・・・それパクリじゃない?

(遮って)リスペクトって言って。

ねえ、主人公は誰?

ミス・パラレルワールド。

だったら、もっと・・・なんかあるでしょう!?

だって・・・あの・・・正直に言います。どうしたらいいですか?

は?

だって、全然この先も次の回も思いつかないんだよ。

何、それ行き当たりばったり感。

すみません。

そんなの私にも分かんないけど・・・私の要望言っていい?

はい・・・どうぞ。

もう、タイトスカートとかヒールとかいいかな。
足は痛いし、疲れるし・・・タイトスカートもピチピチして窮屈なの。
結構、食べたいもの我慢していつも努力してるんだけど。

すみません・・・じゃあ、どんなのがいい?

そうね、近未来の女子高生で放課後にテレパシーを受けて、
秘密の組織からこの街を守る・・・とか、どう。

え・・・何、それ。

反動よ反動。だって、私・・・ミス・パラレルワールドは・・・
幾つもの可能性を駆け抜ける超時空をかける女、なんでしょ。

まあ、そうだけど。

じゃあ、これだってありじゃない。

まあね・・・それか、小説家の奪われた記憶とアイディアを探し求めて
幾つもの可能性の世界を駆け抜けていく!?ってのは。

それ、今の状況をとてもいい感じに弯曲してるよね?

すみません・・・。

まあ、いいわ・・・私と来て。

え?

まずは、あなたの失われたアイディアを探し求めて・・・
片っ端から色んな世界を駆け巡るわよ。
もしアイディアがなければ、作るのよ・・・。

作るって・・・?

アイディアが浮かぶ、チャンスをね。
物語って、その気になればあなたが感じる限り幾つでも生まれてくる、きっとね。

・・・ありがとう。

早く、いきましょ。

え、待って!

  
 

男、戸惑いながらも女に強引に連れられて思わず笑みがこぼれる。

  
  
  
終わり