1001話(2015年6月27日 ON AIR)
「嘘つき少年と嘘つき狼」

作・Sarah

  
 

少年が村を走りながら叫んでいる。

  
少年

大変だー!狼が出たぞー!狼が出たぞー!

  
 

少年は息を切らし小高い丘まで駆け上がる。村中、静まり返っている。

  
少年

狼が……出てないよー、だ。なーんだ。もう村のだれも信じないか

  
 

少年が呟く。そこへ背後から忍び寄る影。大きな狼が少年に声をかける。

  

坊ちゃん、退屈そうですね

少年

わぁ!ほ……本物の……

どうかそんなに怖がらないで下さい

少年

だって……君はその……大きな耳

これは小鳥のさえずりがよく聞こえるように

少年

大きな目は……?

これで遠くに咲く美しい花をみつけることができます

少年

でも、その毛むくじゃらの大きな手

ふかふかしていて自慢の手です。握手しませんか?お近づきの印に

少年

できないよ、だってその大きな口……人間を食べるためだろう?

これはこうやってあなたとお話をするために

少年

本当に本当なの……?

まぁ無理もない。この姿じゃね。でも私は改心した狼、人間とお友達になりたいんです

少年

わかった……じゃあ、僕と友達になろう

本当ですか?

少年

ああ、その代わり僕と一緒に遊んでくれる?

もちろんです。なにして遊びますか?

少年

村まで駆けっこだよ。でも君は狼だから少しハンデをもらわないと。
僕が先に出発するから、君は十を数えてからきてね

……いいですね。やりましょう

少年

じゃあいくよ!それっ

1……2……3……

  
 

少年は丘を駆け下りる。

  
少年

大変だー!狼が出たぞー!狼が出たぞー!本当にでたんだ!狼だー!

  
 

狼は十数え終わり吠えながら追いかける。
一方、村人たちはその狼の声を聞きつけ、窓を開けると少年が狼に追いかけられているのが見え慌てふためく。一人の村人が銃を持ち出し、狼を撃つ。
銃弾により倒れる狼。少年は倒れた狼に近づく。

  
少年

ふん、馬鹿な狼だ

……これであなたは、狼から村を守ったヒーローになれますね

少年

え?

だって友達が悪さをしていたら改心してもらいたくなるじゃないですか

少年

お前、わかってて……

……私のほうが一枚、上手でしたね……

少年

なんだよ……なんで

さぁ本当の友達になりましょう。嘘つき少年君

  
 

狼は少年の方に手を伸ばし、息絶える。少年はその大きな毛むくじゃらの手を握り、静かに泣く。

  
  
  
END