1007話(2015年7月18日 ON AIR)

「ちーちゃんの最終定理」

作・福谷圭祐(匿名劇壇)
出演・平野 舞
大木湖南
学校。教室。放課後。
少年少女が、ノートを開いて二人きり。
チャイムの音。
少年
放課後。幼馴染のちーちゃんと、一緒に勉強することになった。
と言っても、居残りを命じられたのは僕だけで、ちーちゃんはそのお手伝いだ。
少女
ちょっと! 聞いてんの?
少年
頼まれてもいないのに手伝ってくれるちーちゃんは、本当に優しい。しかも可愛い。
少女
しゅう君!
少年
え、ああ、ごめん。
少女
なにボケーっとしてんの。あたしの顔になんかついてる?
少年
いや、何も。問題、何だっけ。
少女
もう。りんごを5つと、みかんを10個買いました。代金の合計は1500円でした。りんごの値段は、みかんよりも30円高いです。みかんは、1ついくらでしょう?
少年
ちーちゃん。
少女
なによ?
少年
好き。
少女
え……なに、急に……。
少年
ずっと前から、好きだった。
少女
も、問題の、途中でしょうが……。
少年
うん。ごめん、先にこれ終わらせなくちゃね。続けよう。
少女
え、あ、うん。
少年
えっと、どうやって解いたらいいのかな。
少女
これは、りんごをxに置き換えて、方程式、作ったらいいから。
少年
うーん、こうかなあ。
少女
ちゃんとしっかり書きなさいよ。
少年
だって、合ってるかどうか自信がないから。
少女
自信がなくても、とにかく行動!
少年
ええと、5x+10(x+30)=1500……これでいいかな。
少女
そうそう、そしたらあとは、式を開いて、移動させれば。
少年
みかんは、一つ90円、かな。
少女
正解。
少年
よし、あと一問だよね。さっさと終わらせて帰ろっか。
少女
え、あ、うん。……お、終わったら、帰っちゃうの?
少年
うん、遅くまで、ごめんね。
少女
そんな、あたしは、別に、もうちょっとくらい……。
少年
え?
少女
ううん、行くわよ。三角形ABCはAC=BCの二等辺三角形である。
また、三角形ECDはEC=DCの二等辺三角形である。
角ACB=角DCEのときBE=ADとなることを証明せよ。
少年
きゅ、急に難しいなあ。それ、ページ間違えてない?
少女
ううん。これで合ってるわ。
少年
証明問題なんて、まだ習って……こんなの日が暮れるまで分からないよ。
少女
ふふん。
少年
なんか、りんごとかみかんとかにして欲しいんだけど。
少女
……女の子ちーちゃんは、好きな人ともっと一緒に居たい二等辺三角形である。
少年
な、え?
少女
男の子しゅう君は、ちーちゃんのことが好きな二等辺三角形である。
少年
僕、二等辺三角形じゃないよ。
少女
女の子ちーちゃんがまだ習ってない二年生の問題を出したとき、
好きな人の好きな人=好きな人の好きな人であることを証明せよ。
少年
それ、問題、変わっちゃってない?
少女
うるさい! 証明しろ!
少年
難しいよ。元の問題より難しいよ!
少女
いいから、しっかり答えなさいよ!
少年
ええと。
少女
ちょっと、何鉛筆なんか握ってんの。
少年
え?
少女
愛の証明を紙に書くつもりか?
鼓動の音。
少年
……ど、どうすればいいの。
少女
わかるでしょ。
少年
合ってるかどうか、自信ないけど。
少女
自信がなくても、とにかく行動! んむっ!
少女は少年にキスをされる。
少年
そして僕は、ちーちゃんにキスをした。
夕焼けに染まって、彼女の頬に花丸が咲いたから、きっと答えは正解だったに違いない。
END