1015話(2015年9月12日 ON AIR)
「深夜2時」

作・

ピンク地底人3号

出演・

坂本アンディ

ゲスト出演・

川北 唯 (オセロット企画)

深夜2時、私は鏡の前で歯を磨いていた。
すると背中越しに女がいる。ぎょっとして振り向く。しかし誰もいない。
再び鏡をみるとやはりいる。女が。

  

こんばんは。

……こんばんは。

診察の予約をしたものですが。

……あの。

ええ。歯のご相談です。歯が痛むんです。どうやら虫歯のようなんです。

……ええ。

診ていただけませんか?

そう言われましても。

  

女はぱかりと口を開く。口の中は真っ黒である。

  

これはひどい。

随分長いこと歯を磨いてないものですから。

なぜ磨かないのです?

磨かずに死んでしまったものですから。

……

人は常に何かをやり残して死んでいくんです。
先生は何かやり残したことはありませんか?

……それは、どういうことでしょう。

また明日の深夜2時に参ります。

  

そう言うと女は鏡の中からいなくなった。私はその日の出来事を夢だと思うことにした。
次の日、私はホテルでマキと会っていた。私は鏡の話をした。

  
マキ

子供の頃、言われたよね。深夜2時に鏡を見ちゃいけないって。

たぶんそれが頭に残ってたんだ。

マキ

それは本当に夢だったの?

そう思うことにしたんだ。

マキ

今、何時だと思う?

……

マキ

行こうよ、洗面所。

いや、やめておくよ。

マキ

なんだ。つまんない。

そういうの、あまり好きじゃないから。

マキ

じゃあこのスイッチ押していい?

え?

マキ

最近のホテルはすごいんだよ。色んな機能がついてるの。

  

マキがスイッチを押すと部屋中の壁がゆっくりと動き始めた。
壁が裏返っていく。部屋が鏡で覆われた。

  

ねぇ。先生。歯が痛むんです。

  

いつの間にかマキの顔が、あの女の顔になっていた。
鏡の向こうでは女が口をあけている。
私は女に飲み込まれながら、人生でやり残したことについて考えていた。

  
  
終わり