1024話(2015年11月14日 ON AIR)
「眼鏡に適う」

作・

Sarah

出演・

平野 舞
坂本アンディ

  
 

とある眼鏡屋で。一本1万円.と三本で5千円のコーナーが隣接してある。

  

ちょっと……ちょっと、あなた!

……え、あ、はい……なんですか?

まったく、そちらのコーナーは暇そうで羨ましいですわ。
呑気にお昼寝なんてされちゃって

すみません。なかなか手に取って頂けないので、つい

ああ、確かあなたが前回お客様に試しがけしてもらったのは、
1週間前だったかしら?それとも2週間前?

いえ、お恥ずかしながら3週間前です。ほら、木曜の夕方に。
よくこの店の前を通ってる大学生の男の子が来てくれて

ああ、あのいっつも野暮ったい安物のグリーンのセーター着た男の子

まぁ確かにいつも同じ服ですけど。でも眼鏡のクリーニングに時々立ち寄ってくれますし、
自分の眼鏡を大切にする良いお客様ですよ

クリーニングは無料なんだから、買ってくれなきゃ良いお客様とは言えないわ

そうですかね……

本当に呑気なんだから。同じ眼鏡でも楽なお仕事でいいわね、三本5千円の安物…
…あら、失礼。ディスカウント眼鏡さんは。ずらっと並んで、どれも一緒に見えるから
滅多に試しがけされることものない

はぁ

私がいる一本 1万円.のコーナーの皆さんは毎日毎日試しがけされて本当に大変なんですからね。この前、子どもが遊んでかけてディオーレさんが壊れたの、あなたもみたでしょ

はい。あれはかわいそうでしたね。かけるところが曲がっちゃって

今日だって、お昼頃に私のお隣りにいたアルマーニョの眼鏡さんが買っていかれたばかりだし

いいなぁ、アルマーニョさんは。僕も早くだれかの眼鏡になって大切にしてもらいたいなぁ

なにを言ってるの。あなた、三本で5千円でしょ?
買っていかれても、雑に扱われて、壊れたら修理もせずにポイですよ

ええ、そんなぁ

私はね、いつかお金持ちの奥様にもらわれてニューヨークにパリにロンドンに、
世界中を一緒に旅してあちこちを見るのが夢なのよ

  
 

一台のトラックが店の前に入ってきて、新しい眼鏡がいくつか搬入される。

  

あら、新入りかしら

そうみたいですね。あの箱はシャネリさんかな。新作モデルみたいですよ

え、ちょ、ちょっとあらやだ。え、ここに新コーナーをつくるの?
ちょ、ちょっとレンズを触らないでしょ!気をつけて持ってちょうだい!!

大丈夫ですか?!

いや.!!

  
 

一本一万円.のコーナーにいる眼鏡が店員に持ち上げられて移動させられる。

  

……ふぅ、なんなのよ、急に。こんなに雑に扱われたのなんて初めてだわ

あの……

なによ

きちゃいましたね、あなたも

こちら側に

あ……三本5千円コーナー……うそ、最悪……

  
 

そこへ大学生の男の子が来店する。

  

あ!あの男の子

ああ、あの野暮ったい?

え、本当ですか?僕を買ってくれるんですか?!やった!!やったぞー!

ええ、ちょっと私は?さっきまで一本1万円.だった私を差し置いて?!

さようなら.、お元気で.!またクリーニングに時々来ますから.!

なによ、急に偉そうに!ふん!ふん!!ふん!!!

  
 

話し相手がいなくなった元一本 1万円.の眼鏡は急に静かになる。

  

シャネリの新作がなによ……………………昼寝でもしようかしら

  
  
END