1038話(2016年2月20日 ON AIR)
「あまから手帖」

作・

ナカタアカネ

出演・

平野 舞
坂本隆太朗

  
 

ジュージューとフライパンで焼く音、ぐつぐつと鍋が煮える音。
階段を降りてくる足音。

  

なんだ、お前か…母さんは?

買い物…お兄ちゃん帰ってきてるし、今晩ご馳走作るんじゃない?

え?

何?

いや、そこのそれ…母さんが用意してくれたやつじゃないの?

違うわよ…これ、私が作ったの…というか作ってるの。

ああ…現在進行形ね…てか、何で?

私だって…料理作るわよ。

そうだけど…どっちかっていうと、目玉焼きとかサンマとか焼きナスとか…
仕上げは全て醤油にお任せなズボラメニューしか作らないだろ。

素材の味を活かしたメニューって、言って欲しいんですけど。

図星。

何よ?

お前…痛いとこ突かれたら、右端の眉ちょこっと下がるからさ。

……。

で、何作ってんの?

  
 

女、黙って男の前に幾つも皿を並べ始める。

  

鶏の照り焼き、ブリの照焼、野菜となんかの煮物…なんか茶色い。

どうぞ。

今は、味噌汁とかでいいんだけど…同窓会で結構飲んじゃってさ。

(皿を押し出して)どうぞ…。

(言いかけて諦める)うん、いただきます…。

ちょっと。

何?

とりあえず一口ずつ食べてみて。

ええっ。

  
 

男、勢いに押されて一口。

  

どう?

醤油の味が強いな。

こっち。

(一口)甘い…。

これは?

……醤油辛さも甘さもあって、なんというか…うーん。

「あまから」って感じ?

いや、そっちじゃない…両者、反発しすぎってやつ。

何それ。

いや、それこっちのセリフだから…。
自分で味見したらわかるだろ?

味見してたわよ…でも、繰り返してたら何がどうだか解んなくなっちゃって。

まあ、味はともかく…みんな醤油と砂糖使ってるしな。

どうしてかなあ。

何…結婚前に料理修行?

まあ、そんな感じ。

あ…未来の旦那さんからの「和食」リクエスト?

そーいうわけじゃないんだけど。

ああ、図星。

何?

眉…また下がってる。

…。

なんか、後味的にまた飲みたくなってきた。

朝から?

飲まないけどさ。

ねえ…「あまから」って結局なんなんだろ?

宇宙の真理みたいなこと言うなよ。
甘いモノ食べた後、辛いものが欲しくなる無限ループ…あれだよ。あれ。

それは分かるわよ。
交互にじゃなくて…一つのものに同居させるって何。

一石二鳥だろ。
っていうか、そんな焦んなくっても「あまから」体験をこれからしてくんだろ?

え?

結婚なんて、相手が恋人でもあるけど、家族でもあり…
甘い毎日だけじゃなかったり。
時にはピリッときたり、後からジワジワ来る辛さもある。
それが、日を追うごとにバランスよく交じり合って…
少しずつ角が取れて上手いこと調和していく…みたいなもんかなーって。

……。

何だよ、その顔…せっかくレシピ伝授してるのに。

感想言っただけじゃない。

今、言ったとこだろ「あまから」生活レシピ。
ちゃんと手帖にメモっとけよ。

ありがとう…でも、料理の方の「あまから」レシピも欲しいんだけど。

じゃあ、母さんに聞けよ。

でもなあ…なんか恥ずかしいじゃない。

じゃあ、誰に聞くんだよ。

そうだけど。

  
 

2人の楽しそうな話が続いていく。

  
  
  
おわり。