1059話(2016年7月16日 ON AIR)
「風ふく先生、さようなら。」

作・

たみお

出演・

平野 舞
坂本隆太朗

ラジオドラマ「風ふく先生、さよなら」

  
 

曲と同時に入る。
曲「落下する 6月」残響ピクニック

  
風ふく先生の別れの日。私たち一同集まって、ひろいひろい校庭で、先生を見送るのです。
空には星。その横にお月さま。見渡すここには、大人はだあれもおりません。
みんなみんな、風ふく先生の子供達です。

  
 

突風

  
(おおきくたくましく)それじゃあ諸君、僕行くよ。君たちは追いかけてきちゃならないよ。

私もいきます!

そりゃだめだ。ほら、あすこに行くんだ。見えるだろう、

そら。

ここからそんなに遠くない。君たち何にも怖がることはない。

先生。いやです。それでもいやです。

君ね、そんな泣きべそ、もったいない。

いやです。

にらみを効かせたその目が好きだ。若いってのは、いいもんだ。
若いってのは下手くそで、若いってのは、とびきり強い。いいじゃないか。
(周りを見渡し)いいじゃないか。

先生だってまだ若い!

  
 

突風
風が先生をすこしずつ舞い上げていこうとしている。

  
がっはっはっは。そうだ、なんと比べる。俺なんてまだまだ若い。
みろ、この腕を。幾本もの静脈が浮き立ち波打ち、荒ぶっている。
みろよ、この目を。赤い大蛇が暴れてる。心臓はこんなにも硬く、こんなにも強い。
俺もまだ若い。しかし、さらばだ。さよならだ。
(小さく優しく)理由なくとも、どうにもならぬ。(大きく)風がふくぞう。

  
 

突風

  
せんせーーーい!いつか帰ってきてください。

がっはっはっは。いんや戻らぬ!
君たちいつまでそこにいる。旅たて、旅たて。風がふくぞう。

  
 

突風

せんせーい。

空中ブランコ、次から次へ。手綱を揺らして、次から次へ。
五本指から、するりとこぼれ、ぐらりと空へ。星ふる夜へ。
空中ブランコ、次から次へ。手綱をゆらして、次から次へ。
五本指からするりとこぼれ、ぐらりと空へ。星降る夜へ。
おおおおい。さようなら、さようなら。

  
 

曲遠のく。
先生がいなくなった校庭と、空の星が残っている。

  
・・・さよなら。先生。

  
  
おわり。