1066話(2016年9月3日 ON AIR)

「私の兄~あれは酉年のことだった~」

作・嘉納みなこ
出演・平野 舞
大熊隆太郎
桃子
(モノローグ)私には兄が一人いる。
なんの仕事をやってもすぐにクビになって、彼女もいない、心配な兄が・・・。
桃子。久しぶりジャン。
桃子
お兄ちゃん。何、舞台見に来るの、久しぶりじゃん。
たまにはな、妹の女優姿を見とかないとな。
桃子
どうだった、あたしのクレオパトラ。
よかったよ、蛇を丸飲みするシーンが特によかったよ。
桃子
実はね、この作品を三年後にブロードウェーに持ってくって話があるんだよね。
へえ!
桃子
でも飛行機代が自分もちなんだよね。だから貯めなきゃね。
貯金はあるのか。
桃子
まあ、10万くらいは。
きたきた。桃子、あのな、その金を増やすいい方法があるんだー。
桃子
何よ。
あのな、その10万をとある会社に預けるんだよ。
いやもう、ぜんっぜん怪しくない会社なんだ。
そしたらな、一年後、千円増えて返ってくるんだよー。
桃子
はあ?
実は兄ちゃんももう預けてるんだ。40万。一年後には4千円増えて返ってくるんだよ。もう兄ちゃん、今からその金をどうやって使うか、楽しみでしょうがないよ。
桃子
お兄ちゃん、騙されてるよ!!
騙されてないぞー?
桃子
そのお金、絶対返ってこないよ?
来るんだ。それにな、最悪、お金が返ってこなくても、物で返してくれるらしい。
桃子
物で?
ああ。預けた金額分の生卵で返してくれるらしい。
桃子
生卵?
そうなんだ。その会社は宮崎の方で養鶏もやってるらしいんだな。
桃子
40万円分の生卵って、いくつになるのよ!!
部屋に入りきらないだろうな。
桃子
お兄ちゃん、騙されてるよ!
何を言うのかな、お前は。兄ちゃんのこの澄んだ目を見なさい。
桃子
騙されてる人の目は澄んでるもんよ!!
ああ。お前にはドッペラークマラーが憑りついている。
桃子
何それ。
悪魔のことだよ。これもその会社の人が教えてくれたんだ。これを見なさい。
桃子
何その指輪。
その会社で特別な人にだけ売ってくれるんだ。
ドッペラークマラーから身を守る指輪。300円。
桃子
それは安いな!!ていうか、安すぎて効かなさそう…。
お札も買ったんだ。一枚10万円。
桃子
それは高いのかよ!!
御祈祷もしてくれる。一回100円。
桃子
縁日価格かよ!!
どうした、桃子。さっきから突っ込みのようなことばかりして。
そんな女の子はもてないぞ?じゃあ兄ちゃん今から、集会があるから!
桃子
お兄ちゃん!
(モノローグ)しかし私はその後、クレオパトラの舞台やら稽古やらで、
兄のことはすっかり忘れてしまっていた。そして、一年後。
電話の音。
桃子
もしもし。お兄ちゃん?
桃子。どうしよう。今部屋に、生卵が8000個あるんだ。
桃子
ええっ?
しかも全部有精卵らしくって。
ヒヨコの鳴き声。
うわ!孵化した!
桃子
どうするの!8000個だよ!
次々孵化するヒヨコたち。
あああ!
桃子
えらいこっちゃ!!
でも、ヒヨコはかわいいね!
終わり。