1126話(2017年10月28日 ON AIR)
「片思いトレイン。」

作・

たみお

出演・

平野 舞
大熊隆太郎

電車が滑り込む。

それじゃあ、また

くるりと君は背を向ける。

あ! あのね。

すぐに振り返る。

えっとね。

うん。

なんでもない。

そう。

なんかない?

え?

ないよね。

うん。

だよね。

くるりと君は背を向ける。僕は、その電車を投げてしまいたい。

  
 

ゴゴゴゴゴゴ。
男は大きくなる。

  

僕の手が大きくなる。指先が膨らんで、第二関節、第一関節、手のひら。
腕に空気が入る。はじけそうだ。肩が横にぐんとのびて、とたんにホームの屋根を頭がつきやぶる。顔をあげると、ビルの屋上。遠くに川。鳥がほほにぶつかる。
僕は電車をつかんだ。ネックレスみたいにぶら下がる車両。
君はそんなことしらぬ顔で、赤いシートに座ってる。
言いたいことがあるんだ。君に。四年分ぐらい。でも言えない。
僕の心は、ちっぽけだ。
このまま電車ごと投げてしまいたい。
僕の見えないところまで、君ごと投げてしまいたい。

  

振り返る。電車の窓から、君を見る。
きょうも、君は、真っ赤な顔で、うつむいてる。

  
 

女、写真をとる。

  

気づいてくれればいいのに。

  
 

ゴゴゴゴゴゴゴ
キラキラした音楽

  

腕がのびて、電車の窓ガラスを割る。バリンとはじけてキラキラ光る。
割れた窓を潜り抜け、驚く君の手をとって、ホームを飛び降り、走り出す。
はためくスカート。君のナイキのスニーカー。
線路ぞい、フェンスをかるがる飛び越えて、ふたり。
屋根をとび、ビルをこえ、飛行機のおなかにキスをする。
どうして言えないのかしら。

  
 

電車の発車音。

  
男女

走る。走る。電車は走る。

君をのせて。

君を残して。

男女

走る、走る、電車は走る。

君を乗せて。

君を残して。

  
  
おわり