1139話(2018年1月27日 ON AIR)

「サヨナラの試合」

作・福谷圭祐
出演・平野 舞
大木湖南
夕暮れ時。カラスが鳴く。
サオリ、元気な口調ではなく、気だるそうに。
サオリ
はいどーも、サオリでーす。
カナタ
え?
サオリ
え、やないやろ。ウチがサオリ言いまして、ほんで相方の、はい、名前。
カナタ
カナタでーす。
サオリ
はい、二人合わせて。
カナタ
……え。
サオリ
決めてええよ。
カナタ
えー、仲良し、えー、仲良し、仲良し、どうしよ。仲良し、
サオリ
仲良しカップルでーす。よろしくお願いしまーす。
カナタ
え、なに、別れんでいいの?
サオリ
なにがやの。
カナタ
え、カップルって。
サオリ
ほんまこの相方ねー、ウチのこと好きや好きや言うてやかましいんですわ。
カナタ
んなもん好きやねんから、しゃあないがな。
サオリ
どこが好きやねんな。
カナタ
いやわからんけど。
サオリ
なんでやねん。そこはわかっとけや。ビシバシ言語化してくれや。
カナタ
なんか、宿命を感じるというか。
サオリ
そこは運命にしとこうや。永遠のライバルみたいになってるやん。
カナタ
俺がピッチャーやとしたら、お前が相手チームの、ピ、キャッチャーやん。
あ、ランナーコーチやん。あ、ちゃう、待って、サードランナー、え、俺が、グローブ。
あ、でも男やからバットか。棒やから。でもある種、皮が、グローブか。
サオリ
一旦落ち着いて。男やからバットとかやめて。
ウチまあまあ思春期やし。皮とかは絶対にやめて。
カナタ
で、応援、お前がチアガールか。可愛い。ビール売りでもええけど。
あ、ウグイス嬢、あ、チケットもぎりのお姉ちゃんがええか。
サオリ
どんどんグラウンド出ていくやん。
カナタ
で、俺が、監督やな。俺サイン出してるやん。お前に。好きやーっ、って。
サオリ
声出てるけど、サイン出したほうがよくない?
カナタ
チケットもぎってるお前に届くように。
サオリ
監督何してんねん。
カナタ
ほんで俺とお前の、バッティング勝負が始まんねん。
サオリ
なんでやねん。ええ加減せえ。(以後、終わりそうな口調で)
カナタ
ほんで、あれやんけ、最終的に、幸せな家庭、素敵なバッテリーを組むんやんけ。
サオリ
いやバッターどこ行ってん。もうええわ。
カナタ
そら俺野球ばっかやってたから、アホで、落ちてもうたけど。
サオリ
こいつ一人でアホアホ高校行かはるんですって。もう、やめさしてもらうわ。
カナタ
別に高校がちゃうかっても、付き合えるやん。
ショート守ってるときでも、セカンドランナーをナンパできるやん。
サオリ
その才能あるなら、はよ道頓堀いったほうがええわ。ほな、おおきに。
カナタ
高校ちゃうくても付き合っていけるって。
サオリ
ありがとうございました。
カナタ
ホームラン打つから!
サオリ
以上、仲良しカップルでした。
カナタ
俺、お前のことめっちゃ好きやねん。
サオリ
次週からこの時間は、元彼元カノ漫才をお送りいたします。
カナタ
俺、……生まれ変わっても、お前のこと、ドラフト一位に指名するから。
サオリ
ウチ、チケットもぎりやけど。
カナタ
ほな、また、……もぎってくれ。
サオリ
なんやの、それ。
カナタ
いつか、俺が、野球少年が、目を輝かせて、お前のところにやってきたとき、
(涙をこらえるように)お前は、もぎってくれ。チケットを、もぎってくれ。
サオリ
もぎるから、泣きなや。
サオリ、はじめて少し笑う。
遠くのほうで、金属バットがボールを打つ音。
誰かの野球は、まだ続く。
END