1144話(2018年3月3日 ON AIR)
「恋愛給付金」

作・

福谷圭祐

出演・

平野 舞
大熊隆太郎

  
 

区役所。

  

番号札、三十四番の方、どうぞ。

あのー、すみません。恋愛給付金の窓口は、こちらですか。

はい、どうぞ、おかけになってください。恋愛給付金の受け取りですね。

あ、はい。三月から、受け取れるって聞いたので。二万円。

そうですね。恋愛をしている方に向けての定額給付となります。

最近は、草食系男子とかも、多いですもんね。結婚率も下がってるし。

そうですね。交際証明書をお持ちか、本日交際届を提出なさいますか。

あ、いえ、交際は、してなくて。

それでは片思いですかね。

あっ、片思いだと、だめでしたっけ。

いえ、目的は恋愛の推奨ですから、片思いでももちろん大丈夫です。
片思い届けをご提出いただいた上で、給付の受け取りが可能となります。

片思い届け。

  
 

紙をめくる音。

  

本日、身分証明書はございますか。

あ、はい。

こちらに相手の氏名、年齢、住所などをご記入いただきまして、印鑑を、

あっ、えっ。相手の氏名ですか?

あ、おわかりになりませんか。

ちょっと、あのー、今はまだ、わからなくて。

そうですかー。恋愛省のガイドラインでですね、
相手の氏名をご提出いただけない段階だと、それは恋愛状態ではないとされておりまして。

あー。

住所や年齢であれば、後日の提出でも構わないんですけど。

そうですか……。

失礼ですが、一目ぼれか、なにかですかね。

そうなんです。

で、ありましたら、勇気を出してお名前を聞いてみてはいかがでしょうか。
恋愛給付金の意義、恋愛省が推奨しているのも、その第一歩を踏み出すことですから。

そう、ですね。二万円、欲しいですし。

ちょっと動機が不純ですけど。

あの……、お名前を教えてくれませんか。

え、私ですか?

はい。

私、山本と言いますけど。

山本さん。山本、ナニさんですか。

わ、私の名前なんて聞いたって、しょうがないでしょう?

教えてください。名前、記入させてください。

さ、さおり、です。

山本さおりさん。ご年齢は。

二十、四歳です。

住所は。

そ、それはもうちょっと、知り合ってからで……。

では、このあとお茶でもどうですか。

五時以降なら……。

ありがとうございます。はい、これ、書類、提出します!

じゅ、受理いたします……。

やった! よし、これで二万円がもらえる! ウルァ!

……受理、やめます。

え、なんで。

二万円で喜びすぎです。

だって、二万円ですよ?

お茶で喜んでください。

え?

さおりとのお茶で喜べよ!

いや、でも二万円……。

おい、なんだこいつ!

  
  
END