1147話(2018年3月24日 ON AIR)
「魔法」

作・

たみお

出演・

平野 舞
大木湖南

ゆきさーん。あれ。

庭よ、庭。

ああよかった。どう、準備はできたかい。

ええ。それに今日はいつもより調子もいいわ。

なによりだ。よし。それじゃあ、今から、魔法をかけるよ。

ほんとにやるのね。魔法。

ほんとにやりますよ。魔法。

最後の魔法は、あれね、20年前。東京を地震から守ったとき。

そう。大変だった

あなたったら地面から都会まるごと浮かすんだもの。

たったの1センチね。

そう。1センチ。命がけの魔法は誰にも気づかれなかったけど。

それでこそ魔法じゃないか。君が知っててくれたらいいんだ。

それで、何するの。

そうだね。楽しみにしておいて。

ええ。楽しみ。

さあ始めよう。

  
 

風が吹きはじめる。魔法が始まる。

  

・・・始まるわね。

うん。ちゃんと、見といてくれよ。昔みたいに。

ええ、見逃さないわ。

きっとこれが最後だから。

  
 

ざわざわざわと音がする。鳥がなく。
声が微妙に若がっていく。

  

あ、緑が芽吹く。庭の花が咲いていくわ。蕾がひらいた。

うん。

蝶が舞う。黄色に青。あなたの魔法はいっつも色を連れてくる。

うん。

わたしこの瞬間がいつも好きよ。ワクワクする。

うん。そう言ってくれる君が、僕は好きだな。

  
 

声が聞こえる。
家に活気。

  

ほら、ゆきさん。庭から家の中をみて。扉が開くよ。

あ、まあ。あれはあたしね。娘時代の。

そう。それから、

あ、あれはあなた。出会った頃ね。わたしたち若いわ!

男女

それから。

父さんと母さん! 学校の先生! 小学校の。
まあ、同級生もいる!はるちゃん! ももちゃん! みんな!
もう会えないみんな。笑ってる。なつかしいわ。

うん。

ね、みて。みんな踊ってる! 家のなかで! すごい。振りも完璧よ。
でもおかしい。あの人たち、あんなに踊れたっけ?

ははは。魔法だからね。

もしかして、あなたの最後の魔法って走馬灯的な、もうじきあたし、死んじゃう的な。

そんなことしない。ぜったいしない。 

じゃあ、ショーを見せてくれたの。

うん。それから、おじょうさん。

なあに。おばあさんに、いったいなあに。

踊りませんか。

嬉しいけれど、わたしもう足腰が・・・

さあ、どうだろう。

・・・動いちゃうわ! 動いちゃってるわ! 足腰軽いわ! なにこれ、魔法?

そうかもしれない。

魔法よ! ほら、ジャンプもできちゃう!

じゃ、僕と踊れるね。

はい! でも、ねえ、せっかく魔法をかけるなら、おばあちゃんのままじゃもったいなくない?

そうかな。年とった二人が、くるくる踊ってるほうが魔法みたいじゃないか。

たしかに。

男と女

あ、扉が開いた。

このまま公園にいこう。僕がいけば花が咲くから、君とそこで踊りたいんだ。

ええ!

  
  
おわり。