1149話(2018年4月7日 ON AIR)
「このハッピーエンドには恣意的な編集が含まれている」

作・

福谷圭祐

出演・

大熊隆太郎
のたにかな子

こうして、召使いの青年とお姫様は、仲良く結ばれることができました。

それから、それから?

それから二人はいつまでも、幸せに暮らしましたとさ。

それから、それから?

めでたし、めでたし。

えっ、おしまい?

おしまい。さ、もうおやすみ。

ちょっとお父さん、ふざけないで。

えっ。

二人は身分の差を自覚しているの?

ああ。自覚しているとも。それでも、二人で協力して、

周囲が反対したのは、反対するだけの理由があったからよ。
嫌がらせで言ってたわけじゃない。
育った環境の違いっていうのは、とっても大きいんだから。

うん。でも、もうおやすみ。

なにより金銭感覚の違いが大きいわよ。

あれ、ちょっと母さん、娘が。

絶対苦労するはずなんだから。ははーん、このお話には恣意的な編集が含まれている。

母さん来てくれ、ちょっと娘が。

結婚は人生のゴールではないし、単なる恋愛の果てでもないのよ。

母さん、娘がなんか、名言みたいなやつ言った。

子どもはどうするの? 産んだの?

産まれたさ。

お姫様に、育児はできるの?

そりゃあ、二人で仲良く、協力して、

だって、両親の反対を押し切っての結婚よ? 親の協力は得られないんだから。
お姫様だって、きっと働きに出なくちゃならないわ。
召使いから転職したって、収入はたかだか知れているでしょうし。

この召使いの青年はね、虫を愛する心優しき男なんだよ。

知ったこっちゃないわよ。コオロギにキスして時給いくらよ?
油で揚げて食ったほうが栄養になるわ。そもそも味覚だって大違いなのよ。
二人が同じ食卓を囲むのに、ストレスがないとは思えないわ。

そんなことはない。お姫様はね、召使いの田舎でとれる泥のついた山菜だって、
おいしく調理してくれるんだ。召使いの少ない収入にも嫌な顔ひとつしないで、
パートに出てくれている。

え、そうなの?

母さんはな、ああ見えて社長令嬢なんだぞ。あの頃、俺がビル清掃のアルバイトでな。

え、なに? お父さんとお母さんの話?

ほとんど駆け落ちだった。だけど、幸せだ。

そうじゃなくて、この絵本の続きは?

娘が大学に行きたいって言いだすかもしれないしな。少ないけど、貯金だってしてあるさ。
たまには、母さんに綺麗な服でも買ってあげたいんだけどな。

別にあたし、大学とか、まだ分かんないし。

だけど、そういうところは、あまり見せたくないだろう?

え?

カッコつけたいじゃないか。そりゃ苦労もするし、辛いことだってある。
我慢してることなんてたくさんある。でもな、幸せだ。めでたしめでたしって顔で、
毎日を過ごしてるんだ。父さんと、母さんも。召使いとお姫様もね。

なんか、ごまかされてる気がする。

続きが気になるなら、続きが自分に訪れるまで、ゆっくり、おやすみ。

ふーんだ。

そのときは、編集長になればいい。

  
  
END