1161話(2018年6月30日 ON AIR)
「空港の見える公園」

作・

はしぐちしん(コンブリ団)

出演・

大熊隆太郎
のたにかな子

  
 

飛行機が上空を飛んで行く轟音が響く。

  

あれはヨーロッパからの機体ですね。

え、あぁ、そうなんですか?

もう少しすると南米ヘ向かう便が飛び立ちますよ。

そうですか。

初めてですか?ここは。余りお見かけしたことないですね。

ええ。

私はね、もう毎日のように来てます。ここの主みたいな感じです。そうそう、
あの青いやつ見えますか?あれが次飛び立つ便です。今は南風ですから、あそこから、
あっちに行って、ほら、あの管制塔の方。分かります?

はい。

そう。で、こちらに向かって飛び立って行きます。

風向きによって違うんですか?

ええ、北風の時はすぐそこから飛び立ちます。その方が迫力有るんですよ。

へぇー。…あれ、南米行きですか。遠いですよね、行ったことあります?

ないです、ないです。南米どころか、海外なんて一度も。

あぁ、そうなんですか。

あ、今、飛行機に乗ったことないのに、なんで?って思いました?

あ、いえ。

でもね、想像すると楽しいですよ。飛行機見ながら、どこヘ飛び立って行くんだろう?
飛び立った先にはどんな人がいるんだろう?ワクワクします。想像力は無限です。

ふふ。」(ト、笑う)

あれ、変なこと言いました?

いえ、素敵です。詩人ですね。

いえいえ、まさか。

想像力は無限ですか。

ええ。世界のどこにでもいけます。

そうですか。…あたしね、あの飛行機に乗るはずだったんです。仕事でね、
行くはずだったんです。あるプロジェクト任されてて。直前になって、はっきりとした理由も
聞かされず、そのプロジェクトから外されて。あれ、多分後輩が乗ってます。
…うまく立ち回るからなぁ、あいつ。

人間関係ですか。

そんなとこです。会社も辞めようかなって。でも何か、気になっちゃって。
かといって出発ロビーにおしかけるほど図太くもなくて、せめてここから見送ったら、
踏ん切りつくかな。なんてね。…ごめんなさい。変な話しちゃって。

いえ、そんなことはないです。

  
 

ジェット機のエンジンが動き出す音がする。

  

ん、あれ?あれあれ?

え?どうしました?

風向き、変わりましたね。

はい?

北風です、北風。ホントにすごいですよ、こっちからのは。

そうなんですか。

吹き飛ばされます。

ええ?

あ、冗談です。

ええ。でも、気持ちは吹き飛ばしてくれるかも、ですよね。

ほら、来ますよ。

はい。…風向き、変わるんですね。

ええ。変わりますよ。きっと。

  
 

ゴーとジャンボ機が飛び立って行く。

  
  
  
おしまい