1162話(2018年7月7日 ON AIR)

「教習所では学べない」

作・福谷圭祐
出演・坂本隆太朗
ゲスト出演・日下七海(安住の地)
女、車を運転している。初めての運転である。
ふううううう、ふううう。
みゆきちゃん、大丈夫? 僕がナビしてあげるからね。
大丈夫。ちょっと今、集中してるから、話しかけないで。
わかった。安全運転で行こうね。だけど、ここは道も広いし、大丈夫だよ。
わかってる。安全運転で、ドライブするから。ふううう。
みゆきちゃんの車で、ドライブデートできる日が来るなんて、夢みたいだよ。
今そういうこと言わないで。集中してるから。
ごめんね。
左右の安全を確認しておいて。
そうだよね。初めての公道走行だもんね。心配しないで。僕がついてるから。
おう。
みゆきちゃんのことは、僕が守るよ。
ちょっとごめん、今ほんと集中してるから。
ごめんね。
左右の確認はできてるの?
大丈夫だよ。ここは道も広いし。
こっちは、耕平くんの命を預かってるわけだから、真剣なの。
うん。真剣にハンドルを握るみゆきちゃんの横顔、素敵だ。
余計なこと言わないで!
ごめんね。
今それどころじゃないから。集中をかき乱すようなことを言わないで。
あ、赤信号だ。ここを右に曲がろうね。
わかってるから。見たらわかるから。
うん。
車、一時停止。ウインカーの音。
クソッ、ピクニック広場はまだか!
みゆきちゃん、落ち着いて行こうね。
おう、すまん。
今日はね、サンドイッチを作ってきたんだ。
おう、そうか。
着いたら二人で食べようね。
よし、青信号だ。黙ってろ。
みゆきちゃんは、ハンドルを握ると性格が変わるタイプなんだね。
黙ってろ。
車、走り出す。
ふうううう。ちくしょう。景色が、教習所と違いすぎるぜ。
僕、みゆきちゃんのこと、本当に好きだなぁ。
急ブレーキ。
わわっ。
コラァ、クソガキ、余計なこと言うんじゃねえよ!
ごめんね。
ああ、もう、ちくしょう。助手席に好きな人がいるパターンの実走訓練なんて、
こっちはやってねえんだわ! こんなことなら事前に教官と恋に落ちとけば良かったわ!
みゆきちゃんが教官と恋に落ちたら、僕、悲しいよ。
わかってんだよ、そんなことは。誰のために免許取ったと思ってんだ。
テメェと色んなところに行きたいんだろうが。テメェといろんな景色を見たいんだろうが。
僕もだよ、みゆきちゃん。行こう、ピクニック広場。着いたら、
みゆきちゃんに伝えたいことがあるんだ。
あん?
僕たち、二人の未来について、大切な話があるんだ。
……おう。
車、走り出す。
みゆきちゃん、結婚しようね。
ぬわー!
車、何かに衝突。
あっ!
ゴラァ、テメェ! 到着してからプロポーズしろや!
音楽。以下、フェードアウトするように、台詞。
みゆきちゃん、ポールが折れちゃったよ!
大丈夫かテメェ、ケガはねぇのか、ゴラァ!
みゆきちゃん、ミラーポールが折れちゃった!
ミラーポールどうでもいい! 大丈夫か耕平、ごめんなマジで!
見て、エアバッグがお餅みたい!
テメェのそういう可愛いところ、大好きだ!
END