1169話(2018年8月25日 ON AIR)

「いい男の条件」

作・嘉納みなこ
出演・大熊隆太郎
のたにかな子
純喫茶「シャロン」の片隅。紅子と淳が腰かけている。
紅子
10年たってからまた私に挑戦してきて、ボーイ。
やっぱり僕じゃダメかあ。
紅子
ふふ。あなたはまだ子供なだけ・・・。
18はもう大人だと思うんだけどなア。
紅子
ふふふ。そういうところが、子供なのよ。
そっか。
紅子
ケーキを頼みましょうか。(指を鳴らす)なにになさる?
じゃあ、ショートケーキ。
紅子
やっぱり子供ね。
あっれえ?じゃあ紅子さんは何を頼むんですか?
紅子
いい女は、ニューヨークチーズケーキを頼むものよ。
うわあ。メモしておかなくちゃ。心のメモ帳に。
紅子
ふふ。
ニューヨークチーズケーキってどんなチーズケーキなんですか?
紅子
知らないわ。
ええっ。
紅子
いい女はね、どんなものかわからなくとも、その中で一番おしゃれなものを選ぶものよ。
そうだったのか。
おしゃれな間。
(溜息)素敵だなあ、紅子さんは。いつか大人の男になってあなたを迎えに来ます。
いや、奪いにきます。
紅子
まあ。楽しみ。
今は、まだ子供だけど。
紅子
そう、あなたはまだ何も知らない。ポケットに綿棒を入れたまま、
洗濯機にかけたらどんなことになるかも知らない・・・。
えっ。どうなるんですか?
紅子
綿の部分がね、ぶわーっと広がってね、そりゃもう、タンポポの綿毛みたいになるのよ。
へええ。
紅子
人生に飽きたら一度やってみるといいわ。
ああ。ほかに、大人の男になるためにやっておくべきことはありますか?
紅子
そうね・・・。大人の男は挫折を知っているわ。
挫折。まだ知らないなア。
紅子
お気の毒さま。
もう。
紅子
私がかつて愛した男は、一度たこ焼き屋を始めたけれど、すぐ潰れたわ。
でもその一か月後にはお好み焼き屋を始めたわ。そしてすぐ潰れた・・・。
そしてそのあとイカ焼き屋を・・・。
粉ものばっかりだ。彼はその後どうなったんですか?
紅子
「スペインで本物のやきそばをやる」と言って私から二万借りて去っていったわ・・・。
そうでしたか・・・。
紅子
あと、大人の男は常に戦っているわ。
それは間違いない。
紅子
はたちのころ、将来を誓った男がいたの。でも彼はあるとき、
「フランス外人部隊に入る」と言って、私から二万借りて去っていったわ・・・。
・・・紅子さん、騙されてませんか。
紅子
いいえ。彼はちゃんと返す約束をしてくれたわ。
それはよかった。
紅子
月々100円の、200回払いで。
紅子さん、紅子さあん!!
紅子
あと、大人の男は本物の恋をするわ。
これは、たまらない。
紅子
私が五年前愛した男は、決してかなわない恋をしていたの。
一体どんな恋を?
紅子
彼は・・・映像の中にしか存在しない女性を愛していたの。
映像?
紅子
彼は私を綾波と呼び、自分を碇くんと呼ばせたわ。
それって・・・
紅子
そして東京で開かれるコミケに行くといって、私から二万借りて去っていったわ・・。
紅子さん。僕にしといた方がいいと思うんですよ。
紅子
あなたは子供。それから、大人の男は・・・
紅子さん、目を覚まして!!そんなとこも含めて好きですけどね!!
終わり。