1173話(2018年9月22日 ON AIR)

「たまごサンド」

作・竹田モモコ(ばぶれるりぐる)
出演・大熊隆太郎
東千紗都
二人同時に
(私は、パッとしない工場に勤める、パッとしない作業員です。)
(僕は、パッとしない工場に勤める、パッとしない作業員です。)
二人
(でも、最近気になる人がいます。)
がやがやと社員食堂の音
…あのー、ここ大丈夫ですか?
あ、はい。あ!…お疲れ様です…。
あ!お…お疲れ様です!
がやがやと食堂の音、しばし間。
あ、あの!…何、食べてるんですか?
あ…た…卵サンド…
あ、卵サンド!いいよね~卵サンド!僕も卵サンド好きなんですよ。
あ…た、卵サンドいいですよね~
……す~…よね~!
女・男
……
(どどどど…どうしよう!?思いきって話しかけてはみたものの、完全に手詰まりだ!
考えろ!考えろおれ!話をひろげるんだ!たまごー…たまごー…)
あ!た…卵の…黄身と白身、どっちが好きですか!?
え。
(ううおぉ~!しくったあぁぁ~!遠足の小学生のような質問をしてしまったああ!
あほだと思われる!ほら見ろ、彼女も困ってる。どうする?撤回するか?
いやちょっと待て、慌ててボロをだすより、ここは落ち着いて相手の出方を待とう。
大人の男がふと垣間見せたお遊び感を演出するんだ。)
黄身と…白身…?
そう、黄身と白身。
(ええええ~!?どうしよう~!黄身か白身!?これ、試されてるよね!?
ここは完全に合わせていきたい!落としたくない、この問題!でも考えたことないし、
そんなこと。だいたい一緒に食べるよね、黄身と白身って。あああ~もう、変な質問!
そうだ、ここは無難に大人の女の対応で…)
えっと、ど…どっちも美味しいですよね。
あ、そう!そうですよね!
女・男
あははははは…
(…しまった。そういうことじゃないんだ。
こういう通り一辺倒の会話をしたいんじゃないんだ、
彼は。どうしよう、このままではつまらない女だと思われる。それは全力で回避したい!
大丈夫、まだイケる。もう一歩踏み込んだ返しをするんだ!)
あの!
はい!
せっ…
せ?
せ…世界から!黄身か白身しかなくなるとしたら、どっちとりますか?
は。
(きゃあああ、引いてる!どうしよう。間違った?方向間違った?もういくしかない、
このままちょっと不思議な大人女子を演じるしか…!)
パンデミックがおきて!…そういうことになったんです。
あ…はい。…えっと…
(思ったより掘り下げてきた。どうしよう?パンデミックおきちゃったし!
…いや、ここまで彼女を追い込んだのは僕だ。僕が悪い…。
策士策に溺れるとはこのことか。彼女はどっちなんだろう…。
これは絶対こだわりがあるはず、黄身か白身…。うーん…。
正直どっちでもいい。考えたことない。
…ていうか、何その世界?そんな世界いやだ!
ええい、ままよ!)
たまごは…し…
し?
き…
き?
し…しみ!
…しみ?
あ、いや、違くて!あの、
しろみ?
いや、きろみ!!
きろみ?
いや、あの!
その時、突然チャイムが鳴り、「エーゲ海の真珠」が響き渡る。
と、同時に機械的な女のアナウンスが放送される。
アナウンス
午後の作業開始5分前です。事故は午後に多く発生いたします。
心を引き締めて作業準備にかかりましょう。
アナウンス終了。薄くBGMはかかっている。
あ、行かなきゃ
ホントだ
あ、じゃあ、また
あ、はい、すいません!また。
はい、すいません。失礼します!
ばたばたと弁当をしまったり、部屋を出る音、廊下を歩く足音。
二人
はあー…。明日は上手くしゃべれるかなあ…