1176話(2018年10月13日 ON AIR)

「キスの予感」

作・たみお
出演・坂本隆太朗
のたにかな子
外国の少し前の映画の中のような、レンガ道が舞台。
メグライアンのようなショートカットの女。
天然パーマを引っ張ってぴっちり整えている生真面目そうな男。
枯葉が舞散る、レンガ作りの道。花屋の角を曲がったら、彼の待つ バス停がある。
車が通り過ぎていく。
いた。彼だ。いつもの癖っ毛が、今日はぴったり整ってる。
やあ!
ごめんなさい、遅くなって
とんでもない。時間ぴったりだ。あ! コーヒー、飲む? カフェオレがいいかな。
それともブラック? さっきそこのカフェで買ったんだ。
テイクアウト?
そう、僕の右手がカフェオレで、左手がブラック。
じゃあブラック。
そう言うと思った。
ありがとう。
あー、
ぬるい!
そう言うと思った! そのー、張り切りすぎて。
(笑う) そう、私たちは今日、初めてデートする。わたしの頭の中は、
キスする予感でいっぱいだ。
音楽。
彼が好きそうなラフなスタイル。
ちゃんと予約した話題の映画。
ふたり 下調べしたレストラン。
それから、予測不可能なキスの予感。
ザーっと雨がくる。
あ、雨!
うそ!そんな予報だった?
いや、今日はずっと晴れだったはずだよ! とにかく、あっちだ! 屋根の下!
うん!
雨を跳ねて、走る足音。屋根の下にたどり着く。
すごい。さっきまで晴れてたのに。
みて! 雨で何も見えない!
それにすごく明るい! これは、つまり、あれだ。
ふたり ゲリラ豪雨!
雷がなる。
わ! そういえば、ゲリラ豪雨って言葉、去年より使わなくなったね。
世界が「突然」に慣れたからかな。
私、まだ全然慣れないわ。
僕も。まいったな。映画のチケット、予約したのに。
もしも、これがドラマだったら。よくある感じの昔のドラマだったら。
突然の雨はラブシーンのはじまり。
困った顔して空を見上げる彼の横顔。雨でぬれて、もどった癖っ髪。身動きできない二人。
それから、予報を裏切る突然の雨。これからの世界がそんな雨に濡れるなら、
これからも、きっと尽きない、キスの予感。あ。
おしまい。