1183話(2018年12月1日 ON AIR)

「勇者でもないし姫でもない」

作・福谷圭祐
出演・大熊隆太郎
東千紗都
いやー、いいもんだったな。勇者様と姫様の結婚式。
ねー、ほんと、素敵だった。
魔王を討伐した勇者様の帰還。いやあ、カッコよかったなー。
お姫様も、すっごいキレイだった。
これで、やっとこの村にも平和が訪れたな。
ほんと、洗濯物も魔物に汚されずに済むわ。
勇者様と姫様も、これからは末永く幸せに暮らして欲しいもんだ。
はぁーあ。
なんだよ、その溜め息は。
ん? 勇者様、カッコよかったなーって。
そうだな。やっぱり、体つきからして、勇者って感じだったな。
それに比べて……。
ん?
あんたさ、最近、太ったんじゃない?
いやいやいや、勇者様と比べてどうするんだよ。
別に勇者みたいになれとは言わないけどさ。
そんなこといったら、お前だって姫様とはえらい違いだぞ?
お姫様と比べないでよ。
お前が勇者様と比べたんだろう。
だから、あんたも少しくらい身体を鍛えなさいよ。
鍛えたところでお前、勇者様みたいにはなれないだろう。
勇者みたいになれなんて言ってないわよ。
言ってるだろ。
少しくらいって言ってるでしょ、話を聞きなさいよバカ。
お前だって、じゃあ、その言葉遣いやめろよ。姫様の気品を見習えよ。
こういうのは生まれ育った環境でしょう。仕方ないじゃない。
大体お前、俺が勇者様みたいになってみろ。恥ずかしいのはお前だぞ?
なによ。
そんなお前、お前の見た目と話し方で。勇者様の隣にいられるわけないだろう。
そんなのお互い様じゃないの。あたしがお姫様だったらあんたなんか分不相応よ。
そういうのは姫様みたいになってから言えよ。
こっちの台詞だし。バカじゃないの。
女、ゴキブリを発見する。
ぎゃあ! うわぁ! ゴキブリ!
えっ。
ゴキブリ、ゴキブリ! ちょっとあんた、新聞紙!
お、おう。お前な、その驚き方もな、
早くしてよ。
お前な、その驚き方もな、姫様とは程遠いぞ。
いいから、退治して! 気持ち悪い! はい、勇者! ほれ!
ったく、ゴキブリくらいで……。
早くしてよ。なんなのよ、そのへっぴり腰。
へっぴり、バカ、間合いをはかってるんだよ。姫は黙って見てろ。
ゴキブリ一匹でなにが間合いよ。早くしてよ。はい、ほら! 早く! バシッと!
お前な、勇者の魔王討伐にお前みたいなやつがいたら、もう作戦が…、
どこが魔王よ、ゴキブリじゃないの!
そのゴキブリに飛びのいたのはお前だろ。
あんただってビビってるじゃないの! がんばれよ勇者!
ちょ、姫、うるさい! お前、あっち行って、ちょっと、魔法の準備をしとけ!
魔法?
あの、洗濯機の横にあったろ。あの、魔法の。緑色の、魔法の。
スプレーのこと?
そう、あの、緑色の、魔法のスプレーを準備しておけ!
なんでお姫様がパーティーに組み込まれてんのよ。
そういうシリーズもあるだろう!
いいから早くしてよ!
やるぞ…。
男、新聞紙でゴキブリを叩く。が、外す。
ああ、外した! まずい!
いやー! もう! やだ! なんなのよ、一撃で仕留めろよ、勇者!
おい、喋ってないで、はやく緑色の魔法を持って来いよ!
ああ、もう一般家庭すぎる!
それも幸せだって二十年後に気づくから、今はまず殺虫剤をくれ!
END