1191話(2019年1月26日 ON AIR)

「借りてもらえない傘をさす」

作・合田団地
出演・大熊隆太郎
東千紗都
――雨の日。
あれ。なにしてるの?
雨が降ってる
そうだね
私、傘、持って来てなくて。雨、止むまで待とうと思って
止むかな
ううん
貸そうか?
いや、いいよ
僕、駅まで走るから、傘、使ってよ
本当にいい
そっか
――間。
なんだ。私、嫌われてるのかと思った
なんでそう思うの? そう思われるような態度とってたかな?
傘、借りてくれなかったから
傘?
うん、この前の雨の日
あー。そうだっけ
せっかく貸してあげるって言ったのに
でも、借りられないよ
どうして?
もしかして、別にもう一つ持ってたの? 折り畳みとか
ううん。あれしか持ってなかった
じゃあ、借りなくてよかった
あれからどうしたの?
あれからって?
私がふて腐れて帰ったあと
もう少し待ってみたけど、それでも止まなかったから駅まで走った
濡れた、よね?
そりゃ濡れたよ。ずぶ濡れになった。笑っちゃうくらい
可哀想
え?
濡れたの可哀想。風邪とかひいてない?
うん。大丈夫。ありがとう
あの日、かっこつけないで私から傘借りてくれたらよかったのに
え。かっこつけてないよ。もし、僕が君の傘を借りて帰ったら、
君が濡れることになってたんだよ
いいの、私は
よくないよ
あの日、ずぶ濡れになって帰って、風邪ひいて、私はあなたから心配されたかった。
もし、そうなってたら私のこと心配してくれてたでしょ?
当然、そうだね
あなたのせいで風邪ひいたんだし
僕のせい?
あなたのせいでしょう。あなたが私の傘を持って行っちゃったんだからね
よかった
なにが?
実際は、傘を借りてもないし、風邪もひいてない
よくないよ
風邪ひいてないのに
本当ならもっともっと私のことを考えてもらえていたのに
どういうこと?
あなたに傘を貸して、ずぶ濡れになって、あなたのせいで風邪をひいていたら、
あなたにもっと私のことを考えてもらえていたのに
考えてるさ
え?
うん。ずっと君のことばかり考えてる
そっか。そうなんだ。じゃあ、あの日、一緒に帰ったらよかったね。私の傘に二人で入って
その手があったか
そうだよ
そうしたらよかった
私もあのときに思い付いていればよかった
じゃあ、そうする?
なに?
今から
私、雨、止むまで待つから
止みそうにないよ
でも、私傘もってないし
僕が持ってる。もし、嫌じゃなかったら、僕の傘に二人で入って、二人で帰ろう
じゃあ、うん
――終わり。