1193話(2019年2月9日 ON AIR)

「あの子のプレイリスト」

作・たみお
出演・坂本隆太朗
東千紗都
ぼくの彼女はいつも音楽を聴いている。最近、バイトで貯めたお金で、
ワイヤレスの白いイヤフォンを買ったらしくって、とにかく、得意げだ。
コードがないんだよ。すごいと思わない?
どうかなあ、すぐ失くしそうじゃん。
あんたはね。あたしは絶対無くさない。ピアスみたいに大事にするんだから。
ピアスの穴は、高校生になってからすぐに開けたらしい。最初はうまくいかなくて、
両耳にばんそうこを貼ったまま、入学式に出たそうだ。ぼくは、そんな彼女を知らない。
朝起きたら、携帯の充電をチェックして、ご飯を食べて、制服に着替えて、イヤフォンをつけて、
靴をはいて、鍵をしめたら、音楽スタート!
一曲目は?
小沢健二のアルペジオ!3分42秒!
途中でしゃべるやつだよね。
それがいいの。ずんずん駅まで歩いて、ちょうど終わる頃に
改札抜けたら、つぎの曲?
うん。ごったがえすフォームに立って、鳴り始めるのは蓮沼フィルの、the misson!
イントロ超えて40秒あたりに、電車が到着。ドアがあく。
事故さえなかったら世界はシステマチックなんだよ。今朝なんてぴったりだったんだから。
一駅すぎて、二駅目の扉があくときに、
つぎの曲になる。
そう。初代ゴジラのメインテーマ。なりひびく低音とともに、現れる2年3組の上層部、
おしゃれ女子軍団! 朝からかわいい!すんごい迫力!そして、そのつぎの駅で、
ぼくが乗りこむ。
うん!
いったいなんの曲がかかるの。
言わない!
なんで!
うるさい!さあ、つぎの駅は、あたしたちの学校のすぐ近くよ。電車がつく。
僕らはおりる。
ぴったりのタイミングで、つぎの曲が始まる!
つぎの曲はなに?
はい!
と、彼女は片方のイヤフォンを渡してくれる。流れてくるのは。
音楽が始まる。くるり/言葉はさんかく、こころは四角 etc?
おはよー。おはよー。とクラスメイトが通り過ぎてく。片方の耳でぼくらはちゃんと返事する。
なるほど、ワイヤレスっていいかもしれない。僕ら、少し離れて歩いても、
ちゃんと音楽は続くんだ。
じゃ。
と僕らは別々の教室へ。
なくさないでよ!
と彼女は言う。耳から外したイヤフォンを、ぎゅっとにぎって、なくさないよと
ぼくは答えるんだ。
おわり。