243話(2000年11月24日 ON AIR)
「夢見る頃」

作・

深津 篤史

  
 

船のきてきがなる

  
こうしてると思いだすなあ。

え。

三年前。

ああ。

もうちょっとがまんしてみいって。

  
 

男少し笑った

  
何これ、港のでっぱてるやつ。

これか?

片足のせて、遠いとこみて、何マドロス。

やかましいて。

もうちょっとがまんしてみい。

それで残ったんは自分やろ。

せやな、あんな時はなんか、そういう気分。なんやろ。

他にいいようないやんけ。

ポーズは?

ポーズは、何そういうもんやろ。海の男。

海の男か。

今はしがない物書きや。

今。

いや。

島にいた頃、よう泳いだよなあ。

ああ、うん。

海の男。

自分のほうが泳ぎうまかったくせに。

水泳選手になりたかってん。

俺は船乗りやな。

船乗りか。

乗る船まちがえたみたいや。

私の港になるてゆうたくせに。

ああ、いうた、いうた。

ふつう港ゆうんは女がなるもんなんやで。

せやけどお前、放っといたらすぐどっか行ってしまうやないか。

うん。

俺な。

島の海はもっと軽かった気がする。

軽いて何?

こう、波をかいてな、すっと水が私の脇を流れてゆける。このままどこまでもゆけるなあて思う。

そういうてお前、おぼれとったやないか。

いっぺんだけやろ。

あん時、俺。

初めてエッチした日やねん。

え。

すんだあと、ああこんなもんかと思った。

うん。

けどな、なんか、私、一つ重たくなったみたいな気がした。ただ、なんとなくな、体が重たくなった気がしてん。

うん。

それで試してみた。島の海はあいかわらず冷たくて気持ち良くってついついな。

うん。

目え覚めたらあんたがいた。あれ、何でやろて思った。何で私の彼氏やのうて、あんたのさむい顔があるんかなあて思った。

放っといてくれ。。

こっちに来て、何かくたくたやなあて思てたら、やっぱりあんたの顔。

うん。

あいかわらずさむいなあ。

じゃあないやろ。生まれつきやし。

もうちょっとがんばってみい。

せやからなんべんもいいな。

なんやろ、こういうださいの、港やから、夜やから、うでぐみしてでっぱりに片足かけて、遠いとこみて、かっこわるいなあ。

もう三年も前の話や。

いや、けどがんばろうて思った。

え。

島から出てきて、最後がこんなかっこわるいんはかなわんなあて。

おいおい。

三年か。

  
 

汽てきの音

  
わたしももう三十一やし。

うん。

もうじきやで、船の時間。

ああ。

ばいばい、島のみんなによろしくな。

ああ。

おい、ちょっとこっちみてみい。

え。

もうちょっとがんばってみい。

お前。

かっこわるいか。

うん。

最後にこういうのはかっこ悪いか。ごっつうかっこ悪いやろ。せやから・・・・もうちょっとがんばってみい。