266話(2001年5月4日 ON AIR)
「男が河にケータイを落とすまで。」

作・

ごまのはえ

  
 

初夏の河原、この河は繁華街を流れ土手にはカップルが並んで座る
今日はとてもいい天気

  
中華でええやろ。

濃いって。

それやったら何がええねん。

えー。

吉牛でええやろ。

濃いって。

濃くない。

えー。

夜に金かけるんやから昼はそういう所にしとこうや。

何か知らんの。

王将がある。

濃いって。

濃くないって。

私、食べられるもんない。

ムカつくな。

何でムカつくんよ。

何でも食べろよ。

何でそんなことでムカつかれなあかんのよ。

実際迷惑かけてるやろ。

濃いのは嫌なの。

王将は濃くない。吉牛も松屋も濃くないわ。アッサリしたのもあるわ。

嫌。

お前チーズ食べるやんけ。チーズなんて油の塊なんじゃ。

はいはい。

濃いんじゃ、めっちゃ濃いんじゃ、ムカつくなぁ。

どこに食べにいくんよ。

知らんわ。

・・・。

  
 

河の流れる音

  
・・・ムカつくわー。・・・めっちゃええ天気やんけ。・・・お前な、言っとくけどあれやぞ、オレのこと臭いとか濃いとか言うなよ、わかってんのか、お前そーゆーとこあるぞ、他人の食べ物とかさ、臭いとかをさ、あんまりグチグチ言わん方がいい。オレはそう思う。わかるよ君の戦術は、あれなんやろ、中谷美紀なんやろ。透明感がほしいんやろ、他人があのマーボー丼とか食ってたら何か言わずにはおれんにゃろ。自分はサラダばっかり食ってるように思われたいんやろ、いや、自分に言い聞かせとんねんな。私はサラダばっかり食ってるーって。私は中谷美紀やーってこう言い聞かせとんねん。

無理やな、はっきり言って不幸になる、サラダだけで生きていけるか?って言うか仏教的に言わせてもらうと、今の時代そーゆー趣向というか方向性ってごまかしやねん。何でかわかる?あれやねん、罪を自覚せなあかん、な。でも嫌がっとんねん、な、私は透明なんやって思いたがっているっていうことはイコール自分が生きていく上で犯さざるを得ない罪に対して無責任、じゃないな、無頓着って言うんかな、フタしとるわけや、な、人間は透明にはなれない。いくらサラダばっかり食べているようにみせかけても俺は知ってる。君がけっこう脂身好きなことを、いくら春色のカーディガンを着ていても俺は知っている。君の背中にどんだけ毛がはえているか。・・・な。

  
 

心地よい河の音

  
・・・怒ってんのか。

・・・・。

何か言えよ。魚はええなー。見て見てあのカップル、めちゃくちゃでかい、うわーあれ二人共百八十越えとんのちゃうか、な。あれ、あれかなやっぱりでっかいもん同士色々話しが合うんかな?

・・・。

あーええ天気や。夜どうする。何か言えよ。

  
 

心地よい河の音

  
でたーはじまったで、おいおい、得意技や、ぶちかましてくれたで、どうするどうする、せこいぞせこいぞ、何かしゃべれよ!

・・・。

うわー、ムカつくー。どうするの、どうするのこれ、シェルターバスンかおい、俺はどうすりゃいいの、な?どうしたらいいんですか、教えて頂けます、ね?せこー。言いたいことあるんやったら言えや、ムカつくわー、それ絶対せこい、そんなんされたら続かない、俺、めっちゃ疲れるんですけど、なぁ・・・なぁ!!

・・・。

もうええわ、俺王将いく。

  
 

男は立ちあがる、男のポケットからケータイが転がりおちる。土手を転がりボチャンと河におちる、気づかない男

  
あっ。

何?

ケータイ落ちた。

  
  
おわり