第273話 (2001/6/22 ON AIR)
「梅雨のあとさき」 作/深津篤史

晴れたな。
昨日は遅くまでのんでたんですか。
初日やし。
それにしては。
何や。
早いやないですか。
一番のり?
びっくりしましたよ。
えらい早よに目覚めてな。
はい。
ええ天気やし。
はい。
昨日はあんなに降っとったのに。
どしゃ降りですもん。
ああ。
俺、晴れ男やねんっていってませんでした?
晴れとるやん。今日は。
はあ。
おかしいなあ。
  女、少し笑った
ここぞという時は晴れるんやけどな。
けど、雨あがりましたし。
うん。
あと、三ステージ残ってますし。
昨日、あれ、何人きとってん?
50人、くらい?
制作さん。
本当は47人。
きっついなあ。
でも今日は晴れましたし。
俺やったら出かけるな。
え。
ここんとこずっと週末雨やったやろ。
はい。
俺やったら出かけるな。
ちょっと。
何でこんなええ天気の日に、好きこのんで芝居なんか。
はあ。
せやろ。
私も。
  男、少し笑った
洗タクします。私は。
そうか。
ええ天気ですし。
現実的やな。
ちがいますよ。
何。
それって洗タクを仕事の一つやと思ってるからでしょ。
はあ。
気持ちいいもんですよ。何か。
ああ、すっきりしたみたいな。
ええ。
命の洗タクやな。
それ、親父くさいです。
30すぎやし。
もう。
長いな。
はい。
夢見たよ。
え。
今朝がたな。
はい。
めっちゃ明るくて切ない夢。
それで目覚めたんですか。
うん。
どんな。
冷たいビー玉の線。
え。
俺の目。
  遠くを車がゆきすぎた
代わりにはめたみた。みたいな。
  男、そういって少し笑った
何もかんもうすみどり、お陽さんがガラスに反射してギラギラ光ってて、金魚にでもなった気分?身体がしびれたみたいに感覚がない。重さがない。音もない。いや・・・。
何。
音はあったな。何か聞こえる。耳すますと、何やら、りーんって、耳なりとかやなくて、もっととぎすまされたガラスのかけらの先をなぞるみたいなそんな音・・・。
私。
目、赤いか。
うん。
あんまし、ねてへんしな。
うん。
にごってるやろ。のみすぎか。
ううん。
何、メルヘンゆうてるねんってな。
ううん。
あんまり、顔くっつけんな。俺、酒くさいし。
うん。
  二人、少し笑った
近づけんなて。
うん。
ちゅうするぞ。
ばか
  と、女、少し笑った
とけてまうんやないかって思った。
え。
劇場の前にぼんやり、立ってて、私みつけてうれしそうに笑った。空、青くってどこまでもまっ青でこのまんま、笑った顔のまんま、とけてしまうんやないかって私、走った。
うん。
さわってもいい?
  男、少し笑った