第285話 (2001/09/14 ON AIR)
『JACKER』 作:サカイ ヒロト

“STORY FOR TWO”番組の始まりを告げる二人のナレーターの声
に重なって聞こえてくる、金属的な摩擦音
グギュッ…グギュギュッ…
人の呼吸のようにも聞こえる「それ」が急激に高まって…


『聞こえるか
僕の声が…
聞こえるか…』
『聞こえてるね
そのまま 耳を閉じないで
クク とびきり愉快な話を聞かせてやるからさ』
え…?
ちょっと、あの…ええっ!?
ストップ!
ストーップ!


Fさん!Fさん!

……んあ。

どうしたんです!?
大丈夫ですか!?

…何が?

何がって…今、急に訳わからんこと…。

誰が?…俺!?

番組中やのに。

つっ、頭…。

ほんま大丈夫ですか?

ぐっ…うおっ…あああっ…大丈夫。

いや、大丈夫ちゃいますよ。
なんか、飲みます?

あ、じゃあコーヒー…何やろ、またや。
気色悪いなぁ…こないだから聞こえるねん、聞こえるとな、とんでしまうねん、頭。

話とんでますやん、落ち着いてください、はい。

ああ、ありがと…うえっ!
何これ!?

何って、水…に砂糖とクリープ入れた…風変わりな飲み物。

なんで水にそんなもん入れんねん!

自分で入れたんやないですか。
コーヒーって言うたやろ。

無かったんです。
で?何やったんです今の?
変な声出して。変な事しゃべって。

…わからへん。
最近、時々。部屋に一人でおるやろ、耳元で聞こえるねん、息する音。
一人やで?一人なのに。

病院、行ったほうがいいですよ。

病院?

疲れてはるんですよ。
診てもらった方が…腰とか…胃とか…。
頭?
…待って、俺は狂ってない…俺はー!狂ってなーい!

いややぁぁっっ!

ま、それは冗談やけど。
ていうか、そうやったらええんやけど。

…え?

霊感、強い方?

いえ。

ふぅん…。

…いやあああっっ!

まだ、何も。

言うてるんと同じです!
やめてください、苦手なんです、そういう…ジョンジーな話。

ジュンジー?

稲川、伊藤、高田。

最後のは違うやろ

駄目なんです怖い話!

知り合いに、やっぱりDJやってる…やってた奴がおって。
昔…そん時は俺、笑っててんけど…聞こえる、言うとった…音。

…息する音。

ん。でな、おかしな事ブツブツしゃべるようになりだした。

『聞こえるか、僕の声が聞こえるか』

いややぁぁっっ!

アンタやろ!話してんの。

うぐっうぐっ。

泣くな鬱陶しい!

場を明るくする為のユーモアやん。
で、そいつはな、逆ラジオジャックされたって。

逆ラジオジャック?

普通、ラジオジャックっていうのは…。

ラジオを、ジャックする。

つまり逆ラジオジャックっていうのは…。

ジャックをラジオする?
場を明るくするためのユーモアですから。

ラジオにのっとられる…違うな、ラジオの向こうに…とり憑かれる。

…ラジオの向こう。

…リスナーや。

……。

テレビとか?ラジオとか?
番組に向かって突っ込むやん?
んー、一人ん時に気がついたら話しかけたり。

そんなん。

相槌うってたり。

あ、それは、まあ。

やろ?そういう、何?
そういう行き場のない声?
想いがこう、オリみたいに霧みたいに溜まるのだ。

のだって言われても。

そいつ東京出身やから。
しかも俺らのコレ、人気番組なのだ。

バカボンのパパみたいなってますよ。

人気番組いう事は…ヘビーリスナーがいるっていう…な。

うう…。

そのヘビーな想いにな、とり憑かれる…ジャックされるっていう…な。

…やっぱり病院行った方が。

かな?

ノイローゼですよ完全に。

やな。そいつも今、入ってる。病院。

疲れてる、疲れてる(笑)

うん。疲れてる、疲れてる(笑)

ストレス、ストレス(笑)

うん。ストレス、ストレ…あ。

え。

いや。

まさか。

いやいや(笑)

ちょっともう、ほんま…あれ?

…。

いや。いやいや(笑)

不吉な呼吸音が
次第に大きくなり
何かを飲み込むような音となる
グギュギュギュウッ!!

H F

『聞こえるか?
僕の声が…聞こえるか?(笑)
OK、じゃあ僕の話も聞いてもらおうか…』


笑い声高まって…
「STORY FOR TWO」番組終わりの挨拶
その最後のジングルの向こう側に、
あの音が、
聞こえた