301話(2002年1月4日 ON AIR)

「正月番組」

作・四夜原 茂
皆様、あけまして。
男女
おめでとうございまーす。
今年もストーリー・フォー・ツゥーをよろしくね。
スタッフ一同、力コブもりもりで頑張っていきます。僕も声を限りに叫びつづけるつもりです。ヘアスタイルを変えた腹金善之介と。
年女の平野米がお送りいたします。
え?年女?
そこ、突っ込まない。
はいはい。
それでは、新春を飾る今年の第1作をお送りいたします。
第2劇場、四夜原茂作…。え?なに?…腹金さん、なに、手でバツ作ったりしてんの?
(小声で)あかん。
(小声で)あかんて?まだシナリオ来てないとか?
シナリオはさっきFAXで来た。
さっき?!まあ、いつも遅いからなあ。
でもこれはアカンで、こんな酷い話、正月から聴かされたらたまらんよ。
どんなんよ、見せて見せて。
目が腐る。
ははは、そこまで言われたらよけい読みたなるわぁ。
この作家さんは…ええと、四夜原さんがあれや、昔、1年間ゴキブリの話ばっかり書いてたやろ。
ああ、あの時大変やったよね。
あ。すみませーん!NGにして下さい。……はい。テイク・ツーできちんとやりますから。今、ちょっと打ち合わせを……はい。…はい。よろしく。
でもどうすんの?やらなあかんのやろ?
無理やで、こんなん。最初のト書きからして無茶苦茶や。
「雲が低くたれ込めた荒野に、血なま臭い風が吹く。黄泉の国から甦った女、メデューサが天使ルシファーに向かって情念の炎を吹きつけるように女は話始める。『女、お茶でもどうですか?』はい、やってみて。
………お茶でも、…どうですくわぁー。
あ、結構できてる。
あー、しんど。
これ、やめとこ。カット。あとは、アドリブで繋いでラストシーンだけつじつま合わせといたらええやろ。
アドリブかあー。あんまり得意ちゃうなぁ。
またまた、聞いたよ、オレ。米さん、友達の結婚式ですごいことやったんやて?
えー!なんで知ってんの?
まあ、その話は置いといて。オレも新しい一発芸を仕込んだし、なんとか時間は潰せる思う。
え?どんなんどんなん?やってみてやってみて。
いくよ。よう見といてな。帽子を…ガバッ。
…………アハハハハ!!なに、その頭、アハハハ…。
すごいやろ、このヘアスタイル。
ほんまや。でも、ちょっと待って…。あれ?
二人
ラジオや!
ラジオやったんや。
ほな、私が説明すんのは?
どんなふうに?
ええと、ええと、「わー、すごーい」とか。
グルメ番組のヘタクソなタレントやないねんから。「すごーい」とか「うまーい」とかで許されへんやろ。
でも、ほんまに凄いんやけどなぁ。あれ?私の芸もアカンのちゃう?これやで、これ。ハッ!く、く、く…。
う、うわうわ、うわー。すっごい、そんなとこまで手が届くかなー。人間やれば出来るんやな。え?
こ、ここにライターで……う、う、う。
(火を付ける)カシャ
え、ええ?なんちゅうか、その、捨て身の一発芸やなぁ。実際、女を捨ててるようにも見えるけど。
(終わって)はー…。
(拍手)すっごーい!
やっぱりアカンやん。ラジオ向きちゃうよー。
そうでもないよ。想像力でなんとか。
なんとかなるんかなぁ。
なるなる。想像力がムクムク湧いてきて、実際に見るよりショックが少ないとか。
ショックって、それどういうこと?もう一回やろか?
もうええて。方針変更ー。FAX頂きましたー。尼崎市のFAXネーム、ポレポレさーん。
ちょっとぉ、なにそれ、FAXなんか何で来てるんよ。
知らんがな。他の番組と間違えたんちゃうか。
それ、どうすんの。
読むんやないか。かなり時間つぶれるし。
読み終わったら辺り障りのないコメント付けて。
2、3分はつぶせる。
ええの?そんないい加減な仕事して。
みんなやってるやないか。何でオレ達だけ毎回こんな苦労せなアカンわけ?そら、楽しい時もあるけど、これやで、これ。
「メデューサがルシファー」に向かって「お茶」て、あんまりや。やんの、これ?
………尼崎市のFAXネームレポレポさんから頂きました。
「今付き合ってる彼と結婚しようかどうか迷ってます」
結婚しましょう。
なんで?
正月やし。
……。
めでたいし、ついでに。
……腹金さん、何かあったん?公演で、関秀十さんに花束の数で負けたとか。
別に、なんもないよ。
さ。次のFAX紹介しましょう。尼崎市のFAXネーム、マッチョさんから頂きました。
「今付き合ってる彼女と結婚しようかどうか迷ってます」えー、何や、これ、コメントもさっきと同じようになってしまうけど。
あれ?これ、電話番号一緒や。
ええ?
ほらー、おんなじFAX番号から送られて来てる。
……ほんまや。何やってんの君達。
やっぱ、同棲してるんちゃう。
同棲?久しぶりに聞いた。その単語、さすが年女。
変なつっこみはやめて欲しいな。真剣に考えてんのに。
倦怠期。ズバリ言っちゃいましょう。長すぎた春。
それ20年位前にはやった単語やね。
えー、その。君達は知らないかも知れないが、倦怠期の次に平和な日々があるのだよ。
ほんまにー?
ほんまほんま。夜、疲れて帰って来たマッチョがな、ガチャ、ただいまー。
おかえりー。今日も遅かったんやなぁ。
あー、疲れたー。
疲れたって、何で?
仕事やないか。
何の?
何のて…急に言われましても、えーと。
「彼は、自称タレントです。昔はテレビに出たこともあると言ってますが、私は見たことありません。毎日、稽古があると言って出かけます。でも、公園でハトにエサをやってるところを目撃したこともあります。どうしましょう?」
あららー。
あかんのちゃう?
あかんて、何で?
生活力ないし。
そ、そんな事どうでもええやないか!
なによ、急に大声出して。
生活生活って、生活さえちゃんと出来たらそれでええんか?メシ食って生きるだけやったら牛や豚やニワトリやって生きてるで。
ちょっと、それとこれとは話が違うやないの。
「彼女は通信教育で女優になる勉強をしています。でも、派遣社員として大手電機メーカーできちんと仕事もこなしているようです。貯金もあるし、凄く頼れる女性なんですが、点、点、点。」
その「点、点、点」の意味するものはなに?
きちんとしすぎてついてかれへんのやろ。
なに言うてんの。2人ともブラブラしてたら、生きてかれへんやないの。どっちかがしっかりしてんと。
なんか夢がないし。
あるやないの。女優になるっていう夢が。
通信教育やろ。なんか、気合というか、やる気というか、そういうもんが感じられん。
勝手に決めつけんといてよ!
な、なんやねん。
ほんとは、いろいろやってみたい事あるねん。な。でも時間とお金の都合で通信教育になってしもてるんやんか。もうちょっとマッチョがしっかりしてくれてたら…。
なんでマッチョのせいにするんや。ポレポレにはどこも悪いとこないんかいな。
ポレポレはけなげにやってるやないの。
その、けなげに見えるとこが嫌なんや。
な、な、なにを言い出すんや。もう怒った。首絞めたろ。
あ!こ、こ、こら、…う、やめ、やめんか、こら…ううー。そ、そんな事すんのやったらコチョコチョするぞ。
あ、あかんて、あかんあかん。
コチョコチョコチョ。
あ、あははははは、ははは、やめてて、ははは。
コチョコチョコチョー。
そこあかんて、はははは、はは…。
あ。…………、すみませーん。はい。テイク・ツーやります。今度はちゃんとやりまーす。
え?
終り?なんで?
え?今のが本番?
そんなアホな。正月やのに。