第309話 (2002/03/01 ON AIR)
『春の音』 作:深津 篤史


波の音

ひとぉつ、ふたぁつ。

あかんな。
も、一回。

うん。

ひとぉつ、ふたぁつ。

あかん。

ううん。

も、一回な。

うん。

よし。

ひとぉつ。

あらら。

も、一回?

いや、あかんわ。

も、一回。

平たい石、あらへんし。

探してこよか。
いや、ええねん、ええねん。

探すで。

やっぱあれやな、昔のようにはいかんわ。

2つも飛んだで。

5つぐらいいってんけどな。

すごいなぁ。

普通や。

5つやろ、凄いで。

すごないて。

ひとぉつ、ふたぁつ、みっつ、よっつ、いつつ、やで。

うん。

何か、すごいで。

すわろか。

うん。

あっ。

何。

おでんか何か買うてこよか。

ええよ。

腹減ってへんか。

そんなんやないけど。

買うてこよか。さぶいし、なんかぬくいもん。

くっつこ。

ああ、うん。

ぬくいで。

海は外れやな。

え。

さぶいわ、まだ。

けど海やで。

日ぃ、照ってたのにな。

うん。

電車乗ってる間に雲出よるし。

うん。

春の海は。

何。

ひねもすのたりのたりかな、って、どないやねえん。

うん?

いや、けっこう荒れとるし。

うん。

どこがやねんって。

ひねもす。

そうそう。

ひねもすって。

やろ。

赤くて小さい花。

え。

え、え。

ちょっと自分。

やないの?

え。

ひねもすって何。

いや、ええとな。

ごめん、あほやな、うち。

花やと思たん。

うん。

そうか。

あほやな、うち。

ううん。

ごめんな、何。

春の海。

え。

赤い花。

うん。

どんなん。

恥ずかしいわ。

言うて。

春の浜辺でな、小さい赤い花がぼんやり咲いてるねん。空缶とかの隅でな。


男 少し笑った

あほ。

ううん。

何。

これ。

平たい石。

男 少し笑って投げた

ひとぉつ、ふたぁつ。

あかんな。

ううん。

もっぺん。

昨日の晩な。

え。

眠れんくてな、羊数えた。

羊。

5匹数えて寝てしもた。棚の向こうで羊さん怒ってた。


男 少し笑った

幸せやで。

ん。

ひとぉつ、ふたぁつ、みっつ……。