第333話 (2002/08/16 ON AIR)
『とんぼ』 作:深津 篤史

風が吹いている

何たそがれてるん。

え。

背中がむせび泣いてるで。

あほ。

何か。

ん。

おっさんやな。あんたも。

やかまし。

背中が寂しくなったらおっさんや。

同いやろ。

ああ、そうさ。

背中で語り出したら大人の男いうもんや。

高校ん時な。
え。
何でもない。

変わらんな。

え。

変わらんのはヨンサンだけや。

国道か。

ん、こっから見えるヨンサンは昔と変わらん。

うん。

あとは全部変わってしもた。ここも。

ごっつ古かったもんな。

何で1年が新校舎やねん。

女少し笑った

理不尽や。何で1年が出来立ての新校舎で、俺ら3年が旧校舎やねん。

うん。

て、今、思った。

今。

もう15年も前やのにな。

15年。

あの頃はそんな事、多分考えた事もなかった。

うん。

今日久しぶりに学校来て、新しなった旧校舎見て、そう思った。

ふぅん。

おセンチやな、多分。

背中がむせび泣くか。

泣きまくりや。

あほ。

変わってへんのはヨンサンだけや。車がぶんぶん走ってる。

うん。

屋上から見える風景。

エライ事変わってしもたな。

自分、この近所やろ。

うん。

俺、大阪出て長いしな。

たまに新聞で見るよ。

俺か。

頑張ってるねんな。

ちっともや。

切りとってスクラップしてます。

え、まじで。

するか、あほ。

何や。

がっかりした。

たまにおるねん。

へえ。

勝手に人に夢押し付けんな、いうねん。

迷惑?

や、ないけど。同窓会で会うやろ。今日みたく。話題は子供と、マンションのローンと車と、出世の話、さんざん聞かされて。

うん。

最後に言われるんは、お前はええなあ。やりたい事やって、て。俺、子供もマンションも車も持ってへんいうねん。

ぐちか。

ああ、そうや。

女少し笑った

すまんな、マネージャー。

部員のグチ聞くんも仕事やからね。

今日行きしにな。

うん。

小学校も中学校も行ってみた。

へえ。

きれなっとったな。

うん。

もっとな。

え。

もっとゆっくり変わっていくもんやて思てた。

街が。

うん。

人も。

人は、うん、十年ぶりやしな。

十年。

大学卒業する頃、いっぺん会うたやろ。

ああ。

あん時は街、昔と変わらんかった。500円握りしめて通ったお好み焼き屋も、OBに説教された喫茶店も、それから。

あ。

うん。

トンボ。

うっすら赤なっとる。

夏も終わり。

未だに空き地見たら寂しなる。寂しい、違う。何やろ。

7年か。

ええ天気やったな、あの日。

今日みたいに。

うん。

15年前も。

え。

15年先も、空は青くて、夏の終わりにはトンボは赤くなって、すいっと飛ぶ。