340話(2002年10月4日 ON AIR)

「機械」

作・久野 那美
機械が働いている
ので 当然 機械音が響いている規則的に リズミカルに
機械<新>
今日から仕事が始まった。新しい職場。新入りではあるけれど、誰も僕にはかなわない。これまで、誰にもできなかったことが僕にはできる。いろんなことが新しくなる。これまでできなかったことができるようになる。これからは・・・・。
ひろみ
ねえ。
機械<新>
(無心に働いている)
ひろみ
ねえ。
機械<新>
(無心に働いている・・つもりではあるが、ちょっとずつ乱れてきたりして・・)
ひろみ
聞いてるの?!
音がとまる
機械<新>
なんでしょう。
ひろみ
返事した!
機械<新>
ひろみさんが呼ぶから。
ひろみ
ふーん。そんなこともできるんだ。
機械<新>
機械ですから。
ひろみ
ふーん。
機械<新>
最新式の。
ひろみ
はーん。まだきれいだもんねー。
機械<新>
どうもありがとう。
ひろみ
ほめてる訳じゃないわよ。最初は誰だってまっさらよ。
機械<新>
・・・・で、何でしょう?
ひろみ
べつに。何てことはないけど。
機械<新>
・・・・・。
ひろみ
退屈だしぃ。
機械<新>
・・・・・・。
ひろみ
ちょっと気になったしぃ。
機械<新>
・・・・・・。
ひろみ
ねえ。なにしてんの?
機械<新>
仕事です。
ひろみ
はは、冗談も言うもんだ。
機械<新>
言うときもありますが、今のは違います。
ひろみ
(あきらめて)面白いひとね。
機械<新>
機械です。
ひろみ
(ため息)。
ひろみ
あんたって、さあ、何の機械?
機械<新>
・・・・・・。
ひろみ
いつから働いてんの?
機械<新>
今日からです。
ひろみ
・・・そっか。
機械<新>
ええ。
ひろみ
それじゃ、まだわかんないよね・・。
機械<新>
・・・・・・・??
ひろみ
仕事、楽しい?
機械<新>
はい。
ひろみ
どのへんが最新式なの?
機械<新>
古い方たちのことはよく知らないんで詳しくは説明できませんが、ここと、ここと、それからここのところがこうなってるのが従来の様式とは違うそうです。
ひろみ
ふうん。ここと、ここと、ほんとだ、へえ。こぉんなふうになってるんだ。
機械<新>
特にここのところの技術開発には相当な苦労があったと聞いています。
ひろみ
でしょうね。
機械<新>
・・・ですから、もう、あんな事故は起こりません。
ひろみ
・・・・・・・・・・・・・・・あんた知ってんの?
機械<新>
何をですか?
ひろみ
・・・あの、事故のこと・・。
機械<新>
具体的には知りません。プログラムされてることしかわかりませんから・・・。ここまでは、聞かれたら答える様にプログラムされてるんです。
ひろみ
そう。(黙り込む)。
機械<新>
やっと時代が変わったんです。古い機械は一掃されます。
ひろみ
そう。
機械<新>
これまでの、たくさんの事故データを元にして僕は創られた。あんなことが、もう二度と起こらないように。・・・・・ひろみさん。
ひろみ
何よ。
機械<新>
いえ・・・・。
ひろみ
じゃまして悪かったわね。。
機械<新>
いえ。
ひろみ
続けなさいよ。
機械<新>
はあ。
機械<新>は仕事の準備をしている
ひろみ
・・・・あんた、なんで私の名前を知ってるの?
機械<新>
そうですね。なんででしょう。でも、ひろみさんに呼びかけられたらいったんストップするようにできてたみたいです。
ひろみ
・・・そして、さっきの話をするようにできてるわけね。
機械<新>
・・・はあ。そうなんでしょうか?
ひろみ
そうよ。そしてあんたはまたスイッチをオンにする。今度は私が呼んだって、もう返事したりなんかしない・・・。誰に呼ばれったって。次ぎにあんたが止まるのは・・・。
機械<新>
止まるのは?
ひろみ
ないしょ。
機械<新>
意地悪しないでくださいよ。
ひろみ
あんたにも分かるわよ。いつか。
機械<新>
いつかって、いつなんです?
機械音 再開する
規則的に リズミカルに
機械<新>
ねえ。ひろみさん。事故って・・?いったい何があったんです?
機械音 大きくなる
規則的に リズミカルに
機械<新>
ひろみさん・・・・・・。(音の中に消えてしまう)。
がしゃん 遠くで何かが壊れる音
関係なく 機械音は続く 規則的に リズミカルに・・・