第355話 (2003/1/17 ON AIR)
「ウッドペッカー」 作/横山拓也(売込隊ビーム)

北海道のあるスキー場。原田修と岡崎香は休暇を利用して2泊3日のスノーボードに来ている 最終日の今日 空港行きのバスが出るギリギリまで滑ろうと 二人は出発30分前にも関わらずリフトに乗っている
いかにもスキー場と言わんばかりに松任谷由美の「恋人がサンタクロース」が流れている
岡崎

楽しかったね。

原田

なんだよ、もう終わりみたい。あと一回滑るんだぞ。

岡崎

だって修と一緒にいる感じがするのって、リフト乗ってるときだけだもん。

原田

そりゃスノボだから。滑ってるわけだから。

岡崎

わかってます。

原田

(発見)あ!

岡崎 何?
原田

ほら、あそこの木。

岡崎

え?

原田 キツツキ。
岡崎 あ、本当だ。すごいすごい、本当につついてる。
原田

キツツキだから。

岡崎

巣作ってんのかな。

原田

いや、あれはああやって木の皮の中にいる虫を掘り出してるんだよ。

岡崎

へえ。

原田

虫が出てきたら、長い舌で虫をぺロっと食うんだ。

岡崎

ウソ。

原田

本当だよ。ちなみに、キツツキの鳥言葉は「最高の思い出」。

岡崎

なに?鳥言葉って。

原田

花言葉みたいなもんだよ。

岡崎

そんなのあるんだ。で、キツツキの鳥言葉が?

原田 「最高の思い出」。
岡崎

本当?

原田 ウソ。いま作った。
岡崎

だと思った。

原田 (笑って)やっぱ来て良かった北海道。飛行機乗ってまで来たかいあった。
岡崎

でも、こんなギリギリまで滑ってて、帰りの便間に合う?

原田 うん。空港行きのバスまで、あと30分ある。
岡崎

30分しかないの?

原田 大丈夫だって。このリフト、5分で上までいくだろ。10分で滑り降りて、10分で着替えたら5分前にはバス停だよ。
岡崎

すごいシビアじゃん。

原田 5分前だぞ。余裕だろ。
岡崎

私10分で着替えられるかわかんないよ。

原田 なんで。10分あったらなんでもできるだろ。
岡崎

軍隊じゃないんだから。お化粧だって直したいし。

原田 そんなのバスでやればいいじゃん。
岡崎

やだよ。恥ずかしいよ。

原田 恥ずかしいも何も、そのバス逃したら飛行機乗れないぞ。明日会社だろ。
岡崎

ギリギリのスケジュール立てた修が悪いんでしょ。

原田 せっかく来たんだから、ギリギリまで滑りたいだろ。
岡崎

そんなんだったら修だけ滑れば良かったじゃんか。私先に帰り支度してたのに。

原田 あー、わかったわかった。せっかくのスノボ旅行なのに、最後の最後で喧嘩はやめよう。
岡崎

だって、

原田

悪かった。確かに俺の都合に合わせすぎた。ごめん。ただ、俺もちょっとでも香と一緒に北海道でスノボしたかったし、できるだけ二人の思い出作りたかったから。

岡崎 修。
原田

ほら、最高の思い出「キツツキ」だって見れたし。

岡崎

うん・・・そうだよね。ごめん、わがまま言って。がんばって10分で着替えて化粧する。

原田

香。

急遽リフトが止まる そして流れていた音楽も止まる

原田

あれ?

岡崎

止まっちゃった。

原田

誰か降り損ねたか。

岡崎

ユーミンも止まった。

原田

うん。

岡崎

大丈夫かな。

原田

すぐ動くよ。

風がえてきた

岡崎

寒いね。

原田

北海道だから。

岡崎

動かないね。

原田

ちょっとテコずってるんだろ。いいじゃん、二人の思い出の時間が増えたと思えば。

岡崎

能天気。

原田

それだけが取り得です。

岡崎

でもさ、音楽も止まってるってことはさ、停電っていうこともあるんじゃない?

原田

え?まさか。

しんしんと雪が降ってきた

岡崎

あ、雪だ。

原田

北海道だから。て言うか、スキー場だから。

岡崎

これ吹雪くよ。

原田

吹雪なんて珍しくないでしょ、北海道だし。

岡崎

そうか。

原田

そうだよ。

やや沈黙

岡崎

・・・動かないね。

原田

おかしいな。

岡崎

あのハードスケジュールがさらにハードになっていくような気がするんだけど。

原田

大丈夫だよ。

岡崎

すでに5分で上に到着っていうのが無理でしょ。

原田

じゃあ滑る時間を短縮しよう。

岡崎

無理だよ。私下手だし。

原田

がんばれば7分でいけるって。

岡崎

無理。

原田

・・・じゃあ、あれだ、着替えの時間を、

岡崎

縮めろって?10分でも無理って言ってるのに?

原田

あ、そうか。

岡崎

「そうか」じゃないよ。どうすんの?

原田

俺のせいか?リフト動かないの?

岡崎

そんなこと言ってないでしょ。

原田

言ってるよ。

岡崎

私が言いたいのは、万が一トラブルが起きたときのことを考えてなかったのかってことでしょ。

原田

だから5分余裕見てただろ。

岡崎

5分じゃお化粧もできないよ。

原田

あれ?さっきは10分で着替えも化粧もがんばるって言ってたのに。

岡崎

上げ足とらないで。私、明日会社絶対休めないんだからね。

原田

そんなの俺だって一緒だよ。

岡崎

じゃあなんとかしてよ。

原田

「なんとか」ってどうすんだよ。

岡崎

そんなの考えてよ。

原田

他人任せな。

岡崎

どうしたら飛行機間に合う?

原田

だから・・・とりあえずリフトが動き出すの待つしかないだろ。

岡崎

いつ動くかわかんないでしょ。

原田

5分も10分も動かないってことはないから。

岡崎

なんで言い切れるわけ?

原田

ほら、吹雪いてきたし、客に風邪でも引かせたらスキー場として問題だろ。なんとかして動かすって。そしたらさ、そうだ!このままリフトに乗ったままユーターンすれば5分で下に着く。10分で滑り下りるところをリフトで5分。5分カットできるわけだよ。

岡崎

そっか。

原田

そうだよ。周り見ろよ。こんなギャーギャー騒いでないぞ。

と 二人 リフトの前後を確認

岡崎

乗ってないんじゃない?誰も。雪で見えにくいけど。

原田

すみませーん!

岡崎

ちょっといきなり大きな声出さないでよ。恥かしい。

原田

何が恥かしいんだよ。(大声で)すみませーん!

岡崎

反応ないよ。

原田

おかしいな。

岡崎

もしかしてさ、スキー場自体営業終わったんじゃない?

原田

まさか。滑ってる人いっぱいいるだろ。

岡崎

雪で見えない。

原田

なんか、急に激しくなってないか雪。

キツツキがコツコツと木をつついている

岡崎

もうキツツキの音しか聞こえないよ。どうすんの?

原田

だから、リフトが動き出すのを待つんだよ。

岡崎

「待つ」って言ったって、動き出す保証なんてないでしょ。

原田

ちょっとトラブってるだけだって。

岡崎

故障だったらなんか放送とかあるでしょ、普通。

原田

じゃあどうすんだよ。

岡崎

それは私が聞いてんの。

原田

ったく。じゃあ、ここから飛び降りるか。

岡崎

なんでそうなるの。

原田

だってリフトはもうリフトじゃなくて、ただの椅子だろ。だったら飛び降りるしかないだろ。

岡崎

無理でしょ。何メートルあると思ってんの。

原田

10メートルもないって。それに下は雪だし、怪我しないと思うけど。

岡崎

警察呼ぶとか、レスキュー隊呼ぶとか、そういう選択肢ないの?

原田

ないよ。リフト乗ってそんな大掛かりな救出してもらったらいい笑いもんだぞ。だいたい、携帯カバンの中だしな。

岡崎

だからって飛び降りるなんて、

原田

バスに間に合おうと思ったらそれしかない。

岡崎

バス以外に空港いける方法ないの?

原田

歩き。

岡崎

ふざけないで。

原田

ないよ。バス以外。

岡崎

どうすんのよ。

原田

だからここから飛び降りるんだよ。

岡崎

降りれるわけないでしょ。

原田

ここで降りなきゃ飛行機乗れないぞ。とりあえず、ボード外そう。

岡崎

外してどうすんの。

原田

邪魔だろ、飛び降りるのに。

岡崎

嫌だよ、高かったのに。

原田

言ってる場合じゃないだろ。後で拾えばいいんだから。ほら、見てろよ。

原田がボードを足から外し ドサっ下へ。思ったより埋もれた「ズボボ」

原田

ああ!

岡崎

ほら、随分埋もれた。新雪だし、リフトの下だから踏み固められてないんだよ。

原田

だ、だからいいんだろ。ボード傷つかないし。僕たちが飛び降りたって怪我ひとつしないよ。

岡崎

なに強がってんの。

原田

ほら、香もボード外せって。

岡崎

嫌だよ。

原田

降りれないだろ。

岡崎

だって、もしかしたらリフト動き出すかもしれないし。

原田

あ、そういうこと言う?

岡崎

可能性の話しでしょ。

原田

ここから降りるって決めただろ。

岡崎

決めたのは修でしょ。あ、修、また自分のスケジュールで私を巻き込もうとしてる。

原田

お前なぁ。

岡崎

だいたい怖くて飛び降りることなんかできないから、私。

原田

じゃあウェア脱げよ。

岡崎

は?

原田

ウェア結んでつなぎ合わせてナワバシゴにしよう。それなら降りれるだろ。

岡崎

やだよ。寒いし。

原田

お前、本当にバスに間に合いたいのか?

岡崎

当たり前でしょ。

原田

だったら協力しろよ。

岡崎

だって修の言ってることって説得力ないんだもん。

原田

なんだと。

キツツキの音が近くに聞こえる

岡崎

あれ?

原田

ん?

岡崎

なんか、キツツキの音大きくなってない?

原田

ああ、そう言えば。

岡崎

あ!

原田

え?

岡崎

上!ロープのとこ。

原田

あ。

岡崎

あいつ、ロープつついてない?

原田

あ、コラ!そんなとこ餌ないぞ。

岡崎

ねえ、あのロープ切れたらどうなるの?

原田

そりゃ、リフトごと落ちるだろ。

岡崎

ヤバイじゃん。

原田

ヤバイよ。こら、つつくな。

岡崎

何が「最高の思い出」よ。最低じゃない。

原田

おい、あっち行けよ。

キツツキの音が扉のノックに変わる 原田の「あっち行けよ」が夢の中でこだまする

岡崎

修!修!入るよ。

と ドアを開けて修の部屋に入る

岡崎

ちょっと、何服脱ぎ散らかして。風邪引くよ。

原田

んん?(ねぼけ)。

岡崎

何やってんのよ。今日から行くんでしょ、北海道。飛行機乗り遅れるよ。

原田

ああ。

岡崎

もう。行く気あるわけ?「最高の思い出」作るんでしょ。