359話(2003年2月14日 ON AIR)
「パッパッパーと光やみ」

作・

樋口 美友喜

  
 

駅がドッと人をはきだす フェンスごしにせんろが見える道 そのでんしんばしらのヨコに消えかけの外灯。

  
少女パッパッパッパッパッー。

  
 

ゾロゾロと人がとおりすぎて誰も少女を気に止めない

  
少女パッパッパッパッパッパッパッー。

  
 

誰も気にとめない

  
少女パッパッパッとけいとうとうが泣く。パッパッパッと命をけずる。パッパッパー。

  
 

男が1人足をとめた。

  
ああ、もうあかんな、このけいこうとう。

少女パッパッパと命をけずる。

あたらしいの、もってきてよかった。ちょっとそこどいてくれるか?おっちゃんがあたらしいのんにしたから。な?

少女頭の上で視界をさえぎる。光、ヤミ、光、ヤミ、光、ヤミ。

ちょっとー、おっちゃん次のそうじもまだあるんやから。はよしてえな・・・。

少女うすよごれて、きいろくなってアカのついたけいこうとう。

やろ?だからはやくこのまっしろいのんととりかえたるねん。

少女パッパッパッパッー、光、ヤミ、光、ヤミ、光、ヤミ、消えたり、ついたり、消えたり、ついたり。

もうだいぶ使ったからな。寿命がきたんやろ。

少女ちょっと、パッパッしたらすぐかえるの?

え?

少女光、ヤミ、光、まだヤンでないのに?

・・・うん。ほら夜中とか明るい方がええやろ?

少女古くなったら女房はすぐとりかえるの?

誰に聞いたんや、そんなこと。

少女古くなったオヤジもクビにできるの?

う・・・。

少女それはあたってるの?

うーん、ちょっとな・・・。

少女まだまだ働けるのにな。このけいこうとうと一緒。

ちょっとガタきてるな。

少女でもまだおわってない。おわってないのに、すぐあたらしいのと、とりかえる?まだこのけいこうとう生きてるのに?

だからな・・・。

少女あとちょっとのこと。パッパッパッー。けいこうとうが泣く。もうすぐ命をおわらす。その最後、見とどけてからとりかえたとして、そんなにモンダイ?

  
 

ガタン ガタンーとでんしゃがとおりすぎた

  
少女、男パッパッパッーとけいこうとうがなく。パッパッパッーと命をけずる。

  
 

少女と男はけいこうとうをみあげ まるで歌っているよう 何だか息とうごう

  
少女光、ヤミ、光、ヤミ 世界がくぎられてるみたい。

そうや!おれだってー、さいごまで、もっと働けたんやぞー。それを、なんや、こんなところにまわしやがって・・。

少女あ!!

うん?

少女いややねん。

  
 

少女が指さしたけいこうとうを男がみると

  
少女そのけいこうとうは、もうすぐ命をおわらす。この世界をくぎって最後の叫びのように一度だけパッパッパッと泣いた。ご苦労サマ。

光、闇、光、ヤミ、か・・・。

少女最後までみとってくれてありがとう。じゃましてごめんなさい。とりかえてください。じゃあね。古くなったオヤジ。

  
 

男 少し笑って

  
どっち方面へ帰るんや?暗いから気つけや

少女光、闇、光、闇、光、闇」・・・・・。

  
 

と 行進曲のように声をかけて歩いていく

  
よっと・・・。

全然ドラマチックやなかったもんな。

  
 

古いけいこうとうをとると

  
うわあ、よごれてるなあ・・・ゴクローサン。

  
 

それはけいこうとうに言ったのか 自分に言ったのか 駅はあいかわらず人をはきだしつづけている