360話(2003年2月21日 ON AIR)
「風の強い日」

作・

深津 篤史

危ないな。

え。

どっかいってる。

ええと。

目。

目?

うん。

いってる?

今は大丈夫。

君は。

朝いつもタバコ二箱買っていくでしょ。

え。

あと缶コーヒー。

君。

毎度お買い上げありがとうございます。

売店の。

今日は早あがり。

ああ、ええと。

最近多いんだ。

え。

おじさんみたいな人。ここ、この公園、近道だから、私よく通るんだけど。

俺みたいな。

早あがり?

ええと。

  
 

と男少し笑った

  
結婚してるの。

え。

あ、別にそういうイミじゃないからね。

あ、うん。

タバコ、銘柄同じだから、ほら。

あ。

吸っていい?

うん。

  
 

女 タバコに火を点けた

  
ちょっと気になって。

営業中。

え。

って事になってる。

うん。

  
 

女 少し笑った

  
次の移動で飛ばされたんだよね。

へえ。

やめようかなとか。

うん。

思ったりもするんだけどこのご時世でしょ。

うん。

これといった資格もないしね。

うん。

つうか。こんな話聞いても面白くないでしょ。

何、見てたの。

え。

さっき。

何って。

何にも。

ええと。

そこの石垣にね。

うん。

トカゲがいるの。

トカゲ。

うん。お天気の日はよく日なたぼっこしてる。

へえ。

青くてツヤツヤしてて、きれい。

ああ。

今日みたし風が強いとみつからないけど。

トカゲかあ

変な女だなって思ってる?

いや、トカゲっていえば、子供の頃さ、こう尻尾つかんで、そしたらプチッて切って逃げる。

うん。

しばらく動いてんだよねっあれ。

そうそう。

何だか。

何。

身につまされるなあ。

そうなの。

尻尾は放っておきゃまた生えてくるけど、切られた尻尾はたまんないよね。

限りがあるんだって。

え。

一生のうち、切れる回数は決まってんだって。二、三回とか。

へえ。

で、尻尾のないトカゲは仲間にいじめられるんだって。生えてくるまでじっと物陰に隠れてすごすんだって。

ええと。

何。

いや、トガゲも大変なんだっていいかけてさ。

うん。

世の中、色んなものを切りすぎちゃってるんだね。とか。

うん。

なんか安っぽい自然番組のナレーターになってるぞ。俺って。

  
 

女少し笑った

  
かっこわる。

いいじゃん。

え。

トカゲも大変なんだねって。生きるって事は斗いなんだねって。

  
 

男 少し笑った

  
あの小さな彼等の姿に我々は何を見つけるのでしょう。何?

うん。

あ。

トカゲ。

ちょっと晴れてきたね。

ああ。