365話(2003年3月28日 ON AIR)
「夜をかけて」

作・

深津篤史(ヨーロッパ企画)

  
 

街のざわめき

  
いうてみ。

え。

くんくんいうてみ。

何や。

ハチ公か、あんたは。

おかえり。

あかんな、最近は。

ああ、うん。

どこもかしこも不景気やゆうて。

せやな。

ラーメン、おごってよ。

金、ない。

かいしょのない男やなあ。

かいしょて、俺、いつから自分の男やねん。

男の男。

うん。

ほんま、役に立たんゆうか。

せやな。

別にええから。

え。

うちも子供とちゃうし。

うんうん。

そこで熱心にうなづくな。

ああ、うん。

ほんま、子供とちゃうから一人で帰れるし。

ブッソウやしな。

タクシー拾たらしまいやしな。

バカにならんし、車代出るわけやないやろ。

ああ、しょぼくさい。

すまん。

せめてバイクとかないの。

俺、機械もんあかんねん。

チャリンコどことめてるん?

そこのガードした。

こないだみたいなんはカンベンやからな。

ああ、あれは運がなかったゆうか。

あれほんまに自分の?

そらもう正真正銘。

まあ、ええわ。

中古やけど。

  
 

女 ひとつため息

  
三十すぎてポリに職質かけられる人は嫌やからな。

しょっ中やん。

うん、うん。

行こか。

え。

さぶいし、送ってな。あんたの愛車で。

コーヒー。

え。

コーヒーのまへんか。

コーヒー。

これ。

  
 

と 男 缶コーヒーをさしだす。

  
ちょっとさめてしもたけど。

ここで?

うん。

ええと。

桜。

え。

桜、さいとるやろ、そこ。

花見?

あれ、八重桜ゆうて、遅咲きやねん。

何で花見。

あいつんちにあったんよ。

え。

自分、行ったことないやろ。

うん。

いや、その、ゆーえつ感とかでいうてるわけやないねんで。

うん。

俺、あいつとはガキの頃からのつき合いやし、つき合いゆうか、つき合うてたわけやないけど。

うん。

パアーッとちらんのよ。

え。

ほら桜ゆうたらパアーッとちるもんやろ。あれ、あれはな、花のまましおれておちるねん、ほら。

あ。

な、みっともないやろ。

ええと。

散りぎわとか、そういう男らしいとこあいつきらいやったから。

うん。

みっともないとこがええやろゆうて。

のんでいい?

あ、うん。

  
 

二人 コーヒーをあけた

  
せやったら。

え。

パアーッといくなゆうねん。

せやな。

なあ。

何。

何でいつもまっててくれるん。

うん。

ごめん変なこと聞いた。。

いや。

あんたはあいつみたいに両方いけるんやないやろ。

うん、けどな。

何。

自分の事は好きやで。

真顔でいうな、あほ。

うん。

おなかすかへんか。

え。

カップラーメンでよかったらうち、おごったるわ。

  
 

男少し笑った