第375話(2003年6月6日 ON AIR)

「腕枕」

作・小幡祥久(太陽基地アパッシュ)
男の部屋。深夜。テレビの音が流れている。
じゃお前このソファ使って寝ていいから。
うん。ありがとう。
でもなええかげんさ。男と別れたら俺とこ来るん、やめてくれる?
え迷惑?
いやいやそうじゃないけどさあ。
来たくなるんよ。あんたの顔見たくなるの。
まええけど。さ明日も早いんやし寝よ寝よ。テレビ消すで。(テレビを消す)
うん。おやすみ。
おやすみい(電気も消す)……て、ちょっとちょっとなに。
え?
なんでお前俺の布団入ってきてんの?
えあかん?
いやいやいやいや。あかんていうかさ。……え、いやあれなにそういうことなんか?っていうかさ……。え?
あのね……あのさあ。
え。なになに。
私な実はな……。
うん……ごくり(唾を飲む)
いや自分でもどうかと思うねんけどな。
うん。
最近な一人で寝れんのよ。
は?
誰かが横におってくれなあかんのよ。
ほお。
それもな男の人やないとあかんみたいなんよ。
マジで。
うん。そういう体になってもうたみたいやねん。
どんな体や、それ。
というわけで、ちょっと。はいはいはいはい(と布団に入っていく)
なになになに。ちょっともう。ああー(入ってこられた)
今日だけ。嫌?
嫌ちゃうけどさ。
あー……うん眠れそう。
そうなん?……(ため息)でもさどうかと思うで。そういうの。
うん。
なんていうか不幸な感じするわ。
分かってる。なんとかせなあかんと思ってるよ。
……男依存症?
わっ、最低やなその響き。ちゃうで、ちゃうちゃう。腕枕がないと寝らんだけやもん。
腕枕依存症?
いやや!そんなん。
でも、そうなんやろ。
……ああ、ふしだらな女になってしもうた。
うん……あのさ俺も一応男やからさ。ええの?
なにが?
そんな安心してええの?
うん。安心できるよ。
そう。……なんですか、これは?
え?
やっぱりあれですか。愛ですか?
えなに?
ちゃうの?
私があんたに?
そう。
あーいーかあ。愛。愛情?
うん。
(照れて)クワーッ。
なんやクワーッて。
ないな。
あないんや。
うん。ないない。
えなに。じゃあこれどういう状況?
えーひとやすみ?ドライブイン?休憩所?オアシス!うん。
へえオアシス。
うん。でもな。
うん。
愛以外はねあるよ。あんたに。全部ある。
あそう。愛以外はね。あるんや。
今日だけ。
うん。
あんたかて眠れへん夜くらいあるでしょ。
え?
ないの?
うん、ない。
そう。幸せなんやね。私と違って。
そうなんかな。不幸ではないんかもしれんな。
あ……眠くなってきた。
うん。ええで。寝て。
(眠りに落ちながら)うん。
……あのさ。
(ほとんど寝ていて)ん?
……俺はさ、あるんよ。全部。
(寝ている)
なあ聞いてる?