39話(1996年12月27日 ON AIR)

「1997年、あなたは恋に出会う」

作・飛鳥 たまき
コンピューター:コ

(町の小さなゲーム場。音楽、機械音。
コンピューター占いの機会の前に座る直子)
「あなたと彼の相性は最悪です」
直子
「わかってるよ。いつだって『最悪です』。コンピューター、壊れてんやないの、もう!」
(直子、コンピューターをたたく。コンピューター、狂ったように音をたてた後)
「あなたのご希望を選択して下さい」(1)恋愛運
(1) 〃
(1) 〃
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
直子
「ほら、やっぱり、こわれてる。選ぶも選ばへんも、恋愛運しかないやんか」
「あなたのご希望を選択してください」
(ピーー)
「早く選択せよ」
直子
「わかったよ。『恋愛運』を選んだらええんやろ」
(ピッ)
「あなたの生年月日を入力してください」
直子
「何回やったても同じ答えしか出せへんくせにぃ!」
「早く入力せよ」
直子
「もう!わかってるいうてるやろ」
(ピッ)
「相手の生年月日を入力してください」
直子
「はいはい・・・・どうせ答えは『最悪です』やろ」
(ビッと同時にコンピュターの画面が乱れ、目茶苦茶な音を立て始める)
「トラブル発生。しばらくお待ちください。しばらくお待ちください」
直子
「こりゃ、あかんわ」
(直子、コンピューターをたたき、立ち上がる)
「トラブル発生!しばらく静かに待て」
直子
「ぽんこつのくせして、えらそうやな」
(混乱した音が高くなった後、突然音が消える)
「(とぎれとぎれに)YES、NOでお答えください」
直子
(直子、帰るのを止め、再び座る)
「ポプラのてっぺんの葉を揺らす風を見たことがありますか」
直子
「・・?・・えっ?・・ええーっ・・え・・?・・YES」
「丘の上からふもとまで、風と競争したことはありますか」
直子
「・・?・・ウーン・・風と競争ねぇ・・これ、何を占ってんのー?・・ない。でも、YES」
「月の夜、自分の影をふみながら歩いたことはありますか」
直子
「・・あるよ・・けど、ちょっと待った。これ、恋愛運やろ?関係あんの?」
「YESかNOで答えてください」
直子
「NO。けど、これ、NOが正解よ。自分の影は踏めへんの。君は志ら知らへんやろうけど」
「雲が大きなくじらになって空を泳いでいるのを見たことがありますか」
直子
「うん?うーん・・くじらやないとあかん?船なら見たことあるけど」
「結構です」
直子
「ほんなら、YES」
「雨あがりの朝、水たまりに空が写っているのを見たことはありますか」
直子
「YES。あれ、なんでかわからへんけど、うれしいよね」
「太陽が閉じた目の中に入り込んできたことがありますか」
直子
「あー・・あるある。芝生に寝転がってると、そういうことあるよ。YES。太陽をずっと見てて、急に目、つむったら、白い太陽かて見えるもんね」
「余談ですが、それを残像といいます(ピッピッピ)夕焼けの色を絵の具の中に探したことはありますか」
直子
「ないよ。NO。絵の具の中には夕焼けの色はないよ。これほんま。君はいっつも部屋の中にいて知らへん思うけど」
「(ピッピー)お言葉を返すようですけれど、わたくしも、夕焼けの色くらい知っています。あなたの後のあのガラスごしに毎日見ていますから。(ピピ)答えを訂正してください。絵の具の中に夕やけの色がないということは、探したことがあるということになります」
直子
「もう、ほんま理屈っぽいなぁ・・YES」
(・・ピーーー・・・混乱の音)
「トラブル発生。しばらくお待ちください」
直子
「ついに壊れた?年やもんね、君は」
「しばらくお待ちください」
(ピーッ、ピピピピーの後、突然静かになる)
「最後の質問です。今までわけもなく涙がでたことはありますか」
直子
「答えないと、ポイント不足で結論がでません。この占い捨てますか」
直子
「・・・そりぁ、あるよー君にはどう見えるか知れへんけど、こう見えても、あたしは正真正銘、女の子やからね」
「要らないことはいわないで、答えだけをお願いします」 
直子
「YES。これでええんやろ。コンピュターのくせして生意気なんんやから」
(ガチャガチャ、ピーピーピー・・・)
「しばらくお待ちください」
(カチャカチャ、ピーピーピー・・・)
直子
「へーえ、いっちょまえなおと出してるやんか。いつだって『あなたと彼との相性は最悪です』しか答えられへんくせにぃ」
(ピッピッピッ・・・必死で作動している音)
「お待たせしました。あなたの1997年の恋愛運です。『1997年、あなたの恋愛運は最高です』(ピッピッ。声、とぎれとぎれに、小さくなりながら)・・・本物の恋・・に・・出会・・・う・・・・・・健闘・・・を・・・祈・・ってます・・・」
(ツーーーー。音消える)
直子
「おい、おい」(ガンガンたたく)
(コンピュター、目茶苦茶な音を出したあとすっと静かになる)
「あなたのご希望を選択してください」
(1)恋愛運
(1) 〃
(1) 〃
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直子
「本物の恋に出会う?・・ふふふ・・ええやんかー・・」