399話(2003年11月21日 ON AIR)
「ユキちゃん」
作/大正まろん
 

     ある平凡な夕暮れ時。
     リビングで母は洗濯物をたたんでいる。
     息子のタケシが入ってくる。


息子 ねー、お母さん。
あら、タケシおかえり。
息子 新しいお家に引っ越したから、動物飼ってもいいって言ってたよね。
タケシがちゃんと面倒見るって約束するならね。
息子 約束するする、するからさー。
で、何が飼いたいの、ワンちゃん、猫ちゃん?
息子 ううん。
じゃあなぁに?
息子 牛。
虫?
息子 牛。
う、し…。
息子 そこの空き地に捨てられてた。
なに言ってるの。ここがちょっと田舎だからって牛なんて、
息子 ホントだよ段ボールに「子牛もらってください」って書いてあったんだから。
まさか。
息子 ほら、母さんもユキちゃんに会ってよ。
ユキちゃんて?
息子 子牛の名前。
えっ!連れてきちゃったの?
息子 だって…。
ああ、駄目、母さん頭痛が…。
息子 都合わるくなったらすぐ頭痛くなるんだから。早く、こっち来て。

     パタパタと玄関に向かうタケシ。思い足取りの母。
     玄関先の子牛、悲しげに鳴く。



息子 ほら、見て、ユキちゃん。かわいいでしょ。
か、かわいいけど。駄目よ牛なんて。
息子 母さん英語で牛ってなんての。
…カ、飼わない。
息子 母さんの嘘つき、ちゃんと面倒みられるなら飼ってもいいって言ったクセに!
そりゃあ言ったけど、動物なら何でもいいなんて母さん言わなかった。
息子 ヨッコん家だって牛飼ってるんだぞ。
横山君のおうちは、ペットとして飼ってるんじゃないの、あれは家畜として、
息子 どっちだって一緒だよ、飼ってたら、飼って。
拾った場所に戻してらっしゃい。
息子 ヤダ。

     子牛鳴く。



息子 ほら、ユキちゃんここに居たいんだよ。ねーお母さん、一生のお願いだから。
そうだ!
息子 え、いいの。
ああ、ううん。…横山君のとこで飼ってもらえないか頼んでみましょう。
息子 ええー。
今は小さいから可愛いけど、こーんなに大きくなるのよ。うちじゃ無理よ。
息子 …きっとボクんちで飼うより幸せだよね。
そうね、仲間もたくさんいるしね。
息子 わかったよ。…バイバイ、ユキちゃん。

     子牛鳴く。
     数時間後。


ただいま。
息子 どうだった?
大切に育てますって。
息子 そっか。
いつだって会えるんだから。
息子 うん。
さ、元気だして。今夜はタケシの大好きな、すき焼きよ。
息子 ワーイ、ヤッター!!

終わってまた始まる





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