404話(2003年12月26日 ON AIR)
「黄昏の猫おじさん」
作/大正まろん
ゲスト出演/菊谷高広(遊劇体)
 
 男・・・自称チロ、関西弁、35歳
 女・・・かおり、標準語、22歳くらい

チロー、チロちゃん、どこにいるのチロォー。
ここ、ここやでー。
チロ、どこなの、出てらっしゃい。
出られへんねん。かおりちゃん、ここや、ここ、家と家の隙間。
・・・あなた誰?そこで何してんの?
わしチロやん。
あのもしもし、チロは猫なんですけど。トラ縞の、シッポのシュットした動物の猫。決してあなたのようなおっさんじゃありません。
何でもええから引っ張ってーや。ここから出して。
イヤよ。
カオリちゃんそりゃ殺生やで。
何で私の名前知ってんのよ。

せやからワシがあんたの飼ぉてる猫のチロやって言うてるやんか。

だからなんで猫のチロがおっさんになるのよ。
チロは人間の歳でいうたらいくつや。
ええと、三五歳くらい。
な。
ふけすぎ。
気まぐれな主人のせいでけっこう苦労してるから。
私のどこが気まぐれなのよ。
昨日酔っ払って帰ってきて、こたつで寝とったワシを無理やりムギューってしながらカオリちゃん言うたやろ。
なんて。
「あーあ、あんたが人間だったらなー」って。
言ったかも・・・。
んで、シクシク泣きながら寝てしもた。
う・・・。
せやからワシ、長老に無理言うて、一日だけ人間にならしてもらったんや。そやけど人間サイズでこの路地抜けようと思ったんが大間違い。にっちもさっちもいかん事になってしもた。
そう言えば、チロみたいなハスキーボイス。
にゃー。
やっぱり信じられない。
信じんでもエエよもうちょっとで人間じゃなくなるし。けどその前に一個だけ伝えたかってん。
なに。
藤木たら言う男の事は、早よ忘れなさい。
なんでそんな事あんたに言われなきゃなんないの。
あいつ、
知ってる二股かけられてた。
え、そら知らんかった。
じゃあなんでそんなこと、
ワシにマジックで眉毛かいたんあの男や。
うそ。
カオリちゃんがおらん時、大事なヒゲ抜いたり、とんでもない虐待野郎やねんから。
うそ、猫好きって・・・。
あんな最低男の為に毎晩泣いてるカオリちゃん見てたらワシ・・・。
チロそんなことされてたんだ・・・。
それとな。
何?
ワシ、熱いコーヒーっちゅうのを一辺飲んでみたかってん。せやからここから、
それは駄目。
なんで。
だってあなたがストーカーって可能性もありうるわけでしょ。
何でやねん、信じてーな。熱いコーヒー、人間の舌のうちに。頼むわ。
じゃあ・・・そこの自販機で買ってきてあげる。
違うねん!部屋で、カオリちゃんが淹れてくれたコーヒー、カレシが来たら淹れてあげるあのコーヒーが飲みたいんニャァァー・・・。

 ハスキーな猫の声。
 女、戻ってくる。

はいコーヒー・・・あれ、おじさんいない。・・・あのおじさん(笑)そんなわけないか・・・

 ハスキーな猫の声。

あ、チロ、どこに行ってたのよもう心配したんだから。さ、お家へ帰ろうねー。

 チロを抱き上げる女。

チロ、ごめんね今夜からもう泣いたりしないから、私。
わかってくれたんやったら、それでエエねん。
え・・・。


                               終わってまた始まる


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