405話(2004年1月2日 ON AIR)
「除夜の鐘」
作/上田誠
 
 部屋に、男と女。
 除夜の鐘が聞こえる。
 大晦日である。
 女は、鐘の音を一つずつ数えている。

(鐘を数えて)……65。……66。……67。
……あと3分かあ。
うん。……68。……69。
……これってさあ、年内に全部鳴らすんだっけ。
んー、正確には、12時までに、107回鳴らして、で、年明けに、最後の1回。
あー、そうなんだ。
うん。(数えている)

 以降、女は喋ったりしながらも、鐘を数える。

ふーん。……にしても、2004年かあ。
うーん。(数えている)
何かもう、すっかり未来の年号って感じだよなあ。
あー。(数えている)

こう逆に、世の中の方が追いついてないって、いうか。

(制して)ちょ。
え?
気が散る。……(数えている)
……お前、何でそれ数えてんの?
え?
さっきから。
(数えながら)なんでってことないけど、こう何か、自分の中の煩悩をやっつけるみたいな。
あー。
一つずつ。(数える)
煩悩全部知ってんの?
知らないけど、もうだからちょっと、うるさい。(数える)
は?
何となくこう、清められていく感じがするじゃん。
あー、鐘の音によって?
うん。新年を迎えるべく。……(数えている。)
……今、何どきだい?
は?
時そば。
ちょっと、分かんなくなったじゃないよ!
いやいや、●回だよ。
ああ……。(数える)
何でひっかかるんだよ。
邪魔しないでよ。……(数えている)
っていうかこれ、間に合うの?
え?
今だって、これで●回だろ?
うん。(数える)
あと●秒だもん。
(気づいて)ああ。
大体、●秒で1回のペースで行かないと、
ホントだ。年内におさまんないよねえ。(数える)
うん。ていうかこれ、速くなってない?
え?

 鐘の音のペースがやや上がっている。

……(聞いて)ほらほら。
(数えつつ)!
明らかにこれ、テンポ早くなってるよ。
ホントだ。
(笑って)ほらほら。
ペース配分間違ったのかなあ。(数える)

 明らかに鐘のペースがさっきより早い。

坊主もう、あせりまくってんじゃん。あと30秒。
(数えている)。
(笑って)もうこれ、さっきの倍ぐらいになってんじゃん。
(数えつつ)納まるかなあ。
帳尻合わせようとしてるけど・……あと15秒。
(数えている)
10秒。もうエイトビートじゃん!間に合う?
(数えて)102、103、……
(カウントダウン)5、4、3、2、1!
(数えて)107!

 2人、ため息とともに拍手。
 坊主の健闘をたたえる。

おめでとう。
おめでとう。
よくやった。
頑張った。うん。
明けましておめでとう。
 ・
 ・
 ・
 108つめ、鳴る。



                               END

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