410話(2004年02月06日 ON AIR)
buddy
作/サカイヒロト(WI'RE)
 

華やかなパーティー会場。音楽。嬌声。は豪音とともに崩れ落ちた。
暗闇。

「でな、その花屋の女の子は手術が成功して目が見えるようになったんだよ」
ココ 「めでたしめでたし」
「あー、まだ続きがあるの。女の子は手術のお金を出してくれた恩人をずっと 探すんだけど見つからない。名乗り出てこない。ある日、店の前をふらふら 通りかかったみすぼらしい男に女の子はお金を恵んでやろうとしてその手を とった。で、気がつくんだ。『 ・・あなたでしたの?・・』って」
ココ 「手を握ったから?」
「そうそう。いい話だろ?」
ココ 「まあまあかな。おじさんの映画よりは面白かったよ」
「悪かったな」
ココ 「・・お腹すいた」
「・・」
ココ 「お腹すいた。・・お腹すいた」

「何度も言うなよ。これだからガキは嫌いなんだよ」

ココ 「さっきまであんなにいっぱいあったのに」
「言うなってば。ああ・・腹へったなあ・・」
ココ 「人も、いっぱいいたのに」
「・・」
ココ 「真っ暗だね」
「お話、してやるよ」
ココ 「みんな、死んじゃったのかな」
「次に撮る新作」
ココ 「難しくない?」
「ないない」
ココ 「お姫様も出てくる?」
「・・出る」
ココ 「やった!」
「物語は、そうだな・・青空から始まる。真っ青な空からのパンダウンだ・・」
ココ 「ねえ、おじさん」
「うん?」
ココ 「おじさんはどんな顔してるの?」
「え?ああ・・ええと、髭を生やしてる。ちょっと最近太りぎみだな、それから ・・難しいな、自分の事説明するのは。ココは?どんな顔だ?」
ココ 「分かんない」
「一言かよ。まあいいや、後でじっくり見てやるから」
ココ 「見ても分かんないかもねえ」
「だな。手を握っても分かんないな」
ココ 「・・本当にいるよね?」
「いるよ。いるだろ、ほら」
ココ 「うん」
「顔も手も分からなくても声で分かるさ。大丈夫だ。大丈夫」
ココ 「・・うん」
「大丈夫だ、大丈・・シーッ、なんか聞こえないか?・・な?おーい!ここだー! ここにいるっつってんだよ!やったぞココ、助かったぞ!へへッ、ここココって なんかややこしいな・・おい・・?おーい・・」

沈黙。ただ闇の向こうから瓦礫を撤去する音がかすかに聞こえる。

「嘘だろ・・ここなんだよ!早くしろよ!畜生!さっっと俺たちを掘り出しやがれ!!クソッタレ!!」

瓦礫にあいた穴に広がる青空。サイレン。人々がこちらを覗き込み騒いでいる。
私の意識はフェイドアウトしていく。

看護婦 「・・動かないで」
「・・」
看護婦 「良かった・・本当に良かった」
「俺は・・生きてんのか・・」
看護婦 「左足と両腕を骨折してますけどね。脊椎も内臓も傷一つない。ええ、生きてますよ。奇跡っていうのかしら、あれだけの瓦礫の下敷きになったのに。あなただけが」
「俺だけ・・?」
看護婦 「あっ・・御免なさい」
「生きてるのは俺だけ?」
看護婦 「・・ええ」
「女の子は?」
看護婦 「え?」
「俺の近くに、いただろ?幼稚園くらいの」
看護婦 「女の子、ですか?」
「そう言ってんだろ!」
看護婦 「関係者の娘さん、ですか?」
「知るかよ!あの子はどうなったんだ?」
看護婦 「落ち着いてください。まだ意識が混乱してるんですよ」
「ココだよ!いただろ!・・なんだよ!なに笑ってんだよ!」
看護婦 「ココなら、そこに。よっぽど大事にしてるんですね。病院に運び込まれた時もしっかり握ってましたよ」
「知らねえよ、こんな人形」
看護婦 「でも」
「俺のじゃない。人形なんかどうでもいいんだ、俺が言ってんのは・・」
看護婦 「だから、それ、ココ」
「・・?」
看護婦 「流行ってますよね最近・・女の子の間で。フフ」
「人形の、名前?」
看護婦 「ていうかブランド?リカ・バービー・ジェニー・ブライス・・」
「ココ・・?」
看護婦 「じゃあ私、先生呼んできますから。安静にしててくださいね、動いちゃ駄目ですよ」
「おい、ちょっと待って!」

ドアが閉まる。テーブルの上には見た事のない人形が置かれている。
ぼろぼろに汚れ、片手が外れ、両目もとれて空洞となっている。
私は、私は、

ココ 「ねえ、まだ出られないの?」

人形が、口を開いた。

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