411話(2004年02月13日 ON AIR)
「あれが敵のアジトだと思うけど違うかもしれない」
作/上田誠
 

     敵のアジトの前。
     風の音。

(声を潜めて)……やるか。
(声を潜めて)……うん。

     男、設計図を広げる。

っていうか、あれって、ホントに敵のアジト?
いや、アジトだろう。
ああ……。
本部がそう言ってんだから。
そっか。
……とりあえず、建物の周囲から、グルーッと、仕掛けていって。
OK。

     男、設計図をたたむ。

……今、行けるかなあ。

     女、様子をうかがう。

……っていうか、何でそう思った?

え?
その、アジトじゃないって。
ああ……なんとなく。
なんとなく?
こうほら、もしアジトじゃなかったら、嫌だなーって。
それだけ?
それだけ。
いや、嫌だけど……。
(笑って)アジトだよねえ。
うん……。

     2人、機をうかがう。

……どっからの情報だっけ。
ああ、009号が、暗号を解読したら、書いてあったって。
ああ……009号。
こうなんか、マイクロフィルムの。
……009号な。
……たまーに、やらかすよねえ。
(考えて)一応、確認とってみよっか。
本部に?
うん。いやなんか、俺もアジトじゃないように思えてきたからさあ。
なんて聞くの?
まあ、「これってアジトですよねえ?」みたいな感じで。
やばくない?
ああ……やばいか。
本部の命令は、絶対なんだから。
ああ……。

     男、不安になる。

(笑って)っていうか、アジトだって。
(笑って)そうだよな。
アジトアジト。絶対アジト。
本部がそういってんだもんな。
うん。仮に、アジトじゃないとしても、……
っていうか、アジトだよ。アジトっぽいし。
ああ……
お前がそうやって変なこというから、感情揺らいじゃったじゃねえかよ。
ごめん。
その、冷徹な、氷のようなアレで行きたいのに……。
アジト。間っ違いなくアジト。やろう。本部のいうことは絶対なんだから。
ああ……。

     2人、機をうかがう。

……犬飼ってるなあ。
……番犬かなあ。
にしては、あんまり、強そうじゃないよなあ。
え?
なんかこう、ドーベルマンとか……。
だから、そこが、逆にアジトなんじゃん。
ああ……。
ドーベルマンなんて飼ってたら、アジトってバレバレだし。
そっか。……これ全体が、アジト?
うん。この建物全体が、アジト。
ああ……一見普通のビルにも見えるけど、
アジト。
(躊躇して)……俺やっぱ、本部に聞いてみるわ。
え?
なんか、(コンセントレーションが)乱れた。こう、うまい感じで。
大丈夫?
うん。(受信機に)あー、もしもし。本部ですか。004号ですけども。……今、はい。アジトの前まで来てまして、え、このなんか、古びたビルがそうですよね?……(笑って)ええ。それは大丈夫なんですけど、……はい。何で、今から作戦を開始しますという……
(男の話にかぶせて)窓あいたよ?

     銃声が2発。

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