414話(2004年03月05日 ON AIR)

「ゾッコン・ラヴ」

作・大正まろん
おじさん、たこ焼きちょうだい。
アカン今日はもう売り切れや。
いっぱいそこに並んでるじゃない。
あのなぁ。
なに?
飽きへんか?
だからなにが?
ワシが言うのもなんやけど。毎晩たこ焼きって。
全然。これ食べないと一日が終わらないんだもん。
何でも過ぎるとよくないんやで。
ねね、今日はどうだった?
どうって?
売り上げは?
ボチボチってとこや。
「ボチボチ」って、つまりどれくらい?
ボチボチはボチボチやんかいさー。
大阪弁って曖昧だよね。
曖昧なトコがエエんやんかいさー。
本日の売り上げ三千円ってとこでしょ。
え、なんで?
見てたから。
いつから?
あそこの喫茶店からずっと。
なんで?
私・・・まじで好きなの。
アカンアカン、君の人生はこれからやんか。年の差いくつや・・・娘でもおかしないねんで。これから色んな出会いがまってるしやな・・・。
もう、私が好きなのは、たこ焼きっ!
た、たこ焼き?
そう、もうゾッコンなの。
・・・はは、たこ焼きか・・・。
まあるくって、あったかくって、トロトロで・・・。
せやろ。そこいらのたこ焼きと比べてもろたら困るわ。
だから私、ここで働きたいの。ううん、バイト代なんかいらない。弟子入りしたいの。
弟子入りってなぁ、わしは一匹オオカミやさかい。
それにさ、どんなに美味しくたってブスッとしてたらお客さん寄ってこないって。この店に必要なのはスマイルよスマイル。
ヘラヘラ笑いながらタコ焼き焼けるかいな。
そんなだから駅前のタコハチにお客さん取られちゃうんだよ。
せやねん、あそこ出来てから、さっぱりで・・・。
でしょ。
いいや、客は帰ってくる。あんなパチもんくさいトコなんかすぐアカンようになる。
行列できてたよ。
・・・。
いいって言ってくれるまで毎日でもここに来るから。
いや、あのな。
自分で過ぎるのは良くないとかいいながら、おじさんだって頑固すぎない?
ああもうウルサイやっちゃな、好きにせぇ。
ほんと?
言うとくけどワシはなんも教えへんからな。
技は教わるんじゃなくって盗むもんなんでしょ。
意味わかってて言うてんのか?
あったりまえよ!ということで、明日からよろしく!じゃあね。
女、去っていく。
あーあ、嬉しそうーにスキップなんかしてるわ。ほんましゃあないやっちゃなぁ。ワシ店タタもう思て決心したとこやったのに・・・スマイルか、スマイルな・・・ハハ、ハ・・・。
不器用に笑ってみる男。
終わってまた始まる