426話(2004年05月28日 ON AIR)
「ネッシーと雪男が同時にいるのにフィルムが残り1枚しかない」
作/上田誠
 
  雪山。
吹雪の音。
……ちょちょ。
ん?
あれ……ネッシーじゃない?
(笑って)ネッシー?
ほらほら、あの湖のあそこ。……ちょっと一見、島みたいに見えるけど。
……あ。
ネッシーだよなあ。
……ネッシーだ。
その、ここがネス湖ではないけどさあ。
(興奮して)ネッシーだよ!ネス湖とか関係ないよ、えー!
やばいよなあ!ちょっと、カメラカメラ!
ああ!(取り出す)
これちょっと、とんでもないスクープ写真なんじゃないの?
フラッシュ炊いたほうがいいかなあ。……ちょっと、早く貸せよ。
……あれさあ。
え?
雪男じゃない?こっちの茂み。
……ああ。
……何か一見、さきもりみたいに見えるけど。
雪男だ。
だよねえ。
(興奮して)あのたたずまいは、間違いなくそうだよ。ってことはこれ、2匹いんの!?
未確認生物が!
やっベー!何この状況。(女に)カメラカメラ。
ああ。
(うれしそうに)どっちから撮ろう。
早く撮りなよ!
……ていうか、お前これ、残り、1枚しかないじゃん。
ああ!
代えのフィルムは?
ない。
お前……!
どうしよう……。
何やってんだよ!なんで残しとかないんだよ!
しょうがないじゃん!そんな2匹も同時にいると思わないし。
っていうかそりゃ、1匹すらいるとは思わないけど。ってことはこれ、どっちか選ばなきゃいけないの?
ってことだよねえ。
えー、(考えて)何この選択。
とりあえず、ここはやっぱ、雪男じゃない? 
いや、ネッシーだろう。
マジで?
何かこう、ビジュアル的なインパクトで。
だけど、雪男も捨てがたくない?
いやだからそりゃ捨てがたいけど、とりあえずどっちか選ばないといけないから。
あー……。
片方は捨てなきゃいけないから。もうだからここは、身を切る思いで。
(思いついて)これは?ロングでとって、2匹同時にいれる。
あー……。
こう、ネッシーと雪男を、ワンショットで。夢の競演!
いや……遠くない?
ちょっと遠いけど。
これ豆粒みたいになるだろ。やっぱどっちかに絞っていかないと。
(見て)だけどほら!雪男が、湖の方に向かって、歩き始めた。
おお!
……ほらほら、近づいてんじゃん。
歩いてる歩いてる。その調子だ!
もっと近づけ!ワンショットに収まれ!
(見て)だけど、なんかだんだんネッシー、微妙に遠ざかってない?
ああ!
こうほら、なんか雪男から逃げるように……。
何で?
おい、動くなよ!止まれ!
止まれ!
ネッシー!
止まった!
これでお前、雪男が近づけば!……(見て)雪男なんで座ってんだよ!
もう!
なんでくつろいでんだよ!
雪男!
立てよ!歩けよ!近づけよもっと!
(見て)っていうか、なんかだんだんネッシー、沈んできたよ。
マジで?
ほら!
いやだけど、だんだん雪男が立ち上がりつつあるんだよ。
だけど、沈むって!
立ち上がった!早く歩け!ネッシーと距離を縮めろ!
沈ーずーむー!
あと10メートル!7メートル!
早く!やばいって!
だから止まんなよ!
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END
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