428話(2004年06月11日 ON AIR)
「青い瞳のステラ」
作/ことぶき(劇団レトルト内閣)
 
昔、とある雑誌の記者に「あなたにとって悲しみ」とはなんですか、と聞かれたことがある。 「悲しみ」にどんな言葉を添えられよう。世界が物事の全てに執拗な答えを 求めるのだとしたら、それこそ「悲しみ」という言葉に例えよう。だから人はメ ロディーを口ずさみ、ステップを踏み、キャンバスに色を置く。この世で「悲しみ」とは何か・・誰かに伝えることが出来ないために
あんた、偉い子だね。あたし、すきよ。
子供の頃はひどく腕白で、親にしかられたって、いつも延びた海岸線を一直線に
白いステラの家へと走っていった。いつも包んでくれる、赤い飴玉が焼けた金髪に透けて魔法の菓子みたいだった。しゃがれた声で話しながら、ステラ、あんたは笑ってばかりいた。
国は、それは、びっくりするぐらい広いよ!畑の端も見えないよ
町よりも?
国よりも?
じゃ、この海ぐらいか?
ああ! あんた、偉いね。そう、あたしの国は、この海みたいだよ
「そんなの嘘だ」ませた口をきいた俺の頭をふざけて叩きながら、強いコロンと
飴玉の香り。大きく開いたドレスに白い胸元が震えていた…
俺は地面の下をはう蟻の行列をじっと見つめていたよ。……・。
そんなに泣くなよ、ステラ…。
あの人はやってくる!あたしを両腕に抱えて、海。浮かべて、国へ!帰るのよ
あの人がやってきて。いつか、きっと、帰るわ。
・・
寂しい?
嘘だ…
…。寂しい?
来ない。俺、知ってるんだから。
…。じゃ、…アンタ、ちょっと呼んできてよ。
  -曲「青い瞳のステラ 1962 夏…」BEGIN
浜辺に行って呼んできて。バルコニーのアタシは赤い点。遠すぎてあの人に
見えないのよ。
めいいっぱい叫んで。
来ないったら
めいっぱい叫んでよ!
打ち寄せる波もない静かな海に立って何度も怒鳴った。そしたら岩場に
赤い影が見えて。ステラ、過ぎてゆく船をじっと見つめていたんだ。
とある記者が僕に聞いた。「あなたにとって人生とはなんですか」。…・。
人生・・?それは、最後まで、鮮やかに踏むステップの響きだろう?
ステラ、僕は迎えに来たよ!大きな船に乗って。笑ってくれよ、もう一度。閉
じた青い瞳をもう一度だけ細めて。



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