433話(2004年07月16日 ON AIR)

「雨宿り」

作・長山現(楽市楽座)
(雨の音。雨宿りしている一人の女。)
(鼻唄)アカシヤ~の雨に打たれて~、このまま~、死んでしまいたい~。
へへ、トコトンついてないなあ。傘ないし。
(バラバラバラバラという激しい雨。)
少年
俺もここで雨宿りしていいかな?
いいよう…。
少年
酒くさ。
ほっといてよ。飲まなきゃやってらんねえってさ、言うだろ。あ…これ、あいつの口ぐせだ…。
少年
もしかして、失恋したとか。
まあ、そうかな。
少年
じゃあ、この雨はあんたの涙なんだ。
なに、それ。やめてよ、なに言ってんのよ。(笑う)なぐさめてくれんの?
少年
(笑って)触るなよ。冷たいって。
君ってけっこう美形じゃない。ねえ、飲みに行こっか。
少年
雨、飲んどけば?
あ、そう…。ねえちょっと、君の服、破けてるじゃない、血だらけだし!
少年
え?これ?
ケガしてんじゃないの?ケンカ?
少年
違うよ。(笑う)こういう服なんだってば。今流行ってんだよ。
ほんとに?こんなのが流行ってんの?
少年
みんなにさ、切ってもらうんだ。
へえ、変なの。あーあ、今時の流行りなんてわかんなくなっちゃったなあ。
少年
ねえ、あんたも切ってくれないかな。ホラ、ハサミもあるし。いいだろ?
別にいいけどさ…危ないよ、今のあたしにこんなもん持たせたら、なにするかわかんないよ。
少年
いいから、ザックリやってよ。
もしかして、はめようってんじゃないよね、切ったとたん弁償しろとかさ。
少年
ズタズタにしていいよ。
ズタズタに?そんな…。
少年
いいよ。そのために来たんだから。
え?
少年
あんたの涙を受けとめるためさ。
(笑いをこらえて)変な子ねえ、あんた。
(雷鳴)
(独白)カミナリが光ると、その子は消えていた。
あたしは持ってきた自分のハサミを、そばのゴミ箱に放り込んだ…。
おわり