438話(2004年08月20日 ON AIR)
「タイプR」
作/樋口美友喜
 
  全く同じ格好で、血の入った点滴を下げ、同じパネルを首から提げて、
セーラーとガクランは一本道の途中で出会った
セーラー・ガクラン あ。
セーラー 何あんた。
ガクラン そっちこそ。
セーラー 誰あんた。
ガクラン そっちこそ
セーラー 真似しないでよ。
ガクラン 真似じゃないよ。
セーラー その輸血、
ガクラン これは僕のオリジナルだからな。
セーラー その首から提げた看板の言葉だって。
ガクラン 「触れることなく交わりましょう」
セーラー 真似しないでよ。

ガクラン

だから真似じゃないって。
セーラー あんた輸血マニア?
ガクラン そっちこそ。
セーラー 私は切実。
ガクラン こっちだって。
セーラー 私は「触れることなく交わりましょう」の道のり長いんだから。HPだって作ったんだから。
ガクラン こっちだって。でも結局変なヤツからしかメールこなくて。
セーラー そう。恥を忍んで友達に相談したら、
ガクラン えー、お前まだなわけ?って言われて。
セーラー そう。平手覚悟で親に相談したら、
ガクラン 病院連れて行かれて。
セーラー そう。それで医者が言うの。
ガクラン・セーラー 「お子さんは生殖機能が未発達のため通常の性行為は出来ません」
セーラー …あんたも?
ガクラン だから自分で探すしかないって思って、
セーラー あんたも?
ガクラン そっちこそ。
セーラー このまんま誰ともつながらずに死んじゃうのかなって思って、
ガクラン それなら別の方法でつながればいいんだって思って、
セーラー 体液より血液が交わればいいんだって思って、でもそれって同じ体の構造の人間じゃないと無理だろうなって。
ガクラン いるわけないけど、
セーラー いるかもしれないから、
ガクラン いつも携帯輸血針。
セーラー 信じらんない…!
ガクラン 信じらんない!
セーラー 会ってすぐホテルって友達の話聞いて、何それありえないって思ってたけど。
ガクラン あるんだ、こういうの。
セーラー それって気軽に体液の交換が出来る人の特権だって思ってたけど。
ガクラン あるんだ、こういうの。
ガクラン・セーラー 腕出して。
ガクラン ぴったり合いすぎ。
セーラー 待って、血液型は?
ガクラン あ、そっか。O型。そっちは?
セーラー …うん、同じ
ガクラン まじで?信じらんない。良かった、これが一番の難関だから。あ、痛かった?
セーラー 平気。私なら気にしない。だって誰ともつながらずに一生が終わるのと、誰かとつながったから一生が終わるのとどっちが素敵か分かるでしょう?
ガクラン ねぇ、入ってる?
セーラー うん、奥まで。
ガクラン 混じってる?
セーラー うん、奥まで。
ガクラン 知ってる?血液に記憶する能力があるんだって。一滴、一滴が一秒一秒を記憶してるって。
セーラー じゃあ、もう片方に残るんだ。もし死んだとしても。記憶が混じって私の体の中で巡り続けるんだ。一滴一滴、あったかい。つながるって素敵。交わるって気持ちいい。流れ込んでくる。ねぇ?
ガクラン うん。
セーラー ねぇ。
ガクラン …うん。
セーラー ねぇ?
  ガクランの声は、どんどん小さく
セーラー 私なら気にしない。
ガクラン …うん…
セーラー 交われるなら、何だってする。
ガクラン
セーラー ごめんね。
  ガクランの体は冷たく冷たく、硬くなる


おわり
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