440話(2004年09月03日 ON AIR)
「埋 葬」
作/大正 まろん
 
人生で、真に愛する人は三人現れるそうだ。誰が言ったか、また、この言葉が事実であるのかボクは知らない。ただボクは彼女以上に・・・いや、やめておこう。ボクの彼女に対する感情は深くて、激しくて、取り止めがない。
お願いがあるの。
ボクは彼女の奴隷、彼女の歓心を得るならばこの命だって差し出せる。
穴を掘って欲しいの。
穴?
それは深くて大きな穴よ。いい?
もちろんさ。彼女の為なら象だって入れるくらいの穴を掘ろう。
  時計の秒針の音が聞こえる。カチコチカチコチ。
先生、そうやってボクは延々と彼女の為に、穴を掘り続ける夢を見るのです。
それが毎日ですか。
ええ、次第に穴は深く大きくなっていく。そして昨夜、ボクは彼女に埋められてしまったのです。
埋められたって?
彼女が掘り返した土を穴に埋め戻していくのです、ボクは穴の中から止めてくれと叫ぶのですが、何故だかボクの声は彼女に届かなくて・・・。先生これは一体何を表しているのでしょう?
駄目じゃないの。
何が駄目なのです?
勝手に出てきちゃ。
あの、先生?
知ってたわ。穴の中にあなたが居るって事くらい。
君は・・・。
折角埋めてあげたのに。折角悲しんであげたのに。
けどボクは君と生きていきたいんだ。
早く穴に戻るのです。
それは夢の話で、
さあ、早く穴に戻るのです。
  時計の秒針の音が聞こえる。カチコチカチコチ。
そうやって、その先生というか、その女に追い詰められて、もう一度埋められてしまうんだ。
それは恐ろしい夢ね。
ちなみに、女は二人とも君にそっくりなんだけどね。
ひどい。私はそんな事しないわ。
そうだね。
・・・今何時?
どうして?
朝が来る前に帰らなくちゃ、
帰るって、ここは君の家だろ。
いいえ。
どこにも行かないでくれ、君が居なくちゃ駄目なんだ。
帰るのはタダシさん、あなたよ。
え?
死んだの、あなたは。
ボクは死んだのか?
明日も仕事なの、少しは眠らせて。
ねぇ、ボクは死んだのか?
少なくとも私の中ではね。
それはどういう意味なんだ?なぁ、答えてくれ、おい、寝るなって。聞いてくれ、ボクは君と生きていきたいんだ・・・。なぁ、おい、おいって、頼むからさぁ・・・。
目覚まし時計の音が聞こえる。
おはようタダシさん。あら、もう起きてたの。
ああ。
どうしたの顔色悪いわよ。
とても悲しい夢を見たよ。
どんな夢?
・・・ううん、言わないでおく。本当になってしまうと怖いから。
そう・・。あ、ねえ、お願いがあるんだけど。
・・・・。


終わってまた始まる
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