442話(2004年09月17日 ON AIR)
「国民総背番号制の朝」
作/上田 誠
 
  朝。
ワンルームマンション。
妻は、先に起きて身支度をしている。
トイレから、夫の小便の音。
ちょっちょっ。……ドア閉めて。
ああ……。
  ドアを閉める音。
水洗の音がして、夫、トイレから出てくる。
(うれしそうに)聞こえてた?
聞こえてた。すんごい不愉快な朝だったから。
ああ。
……何か、食べてく?
ああ、軽く入れてく。何か、シリアル的な……。
ああ……。
  食器棚から、皿を出す音。
冷蔵庫を開ける音。
届いてた。
え?
それ。
ああ……(にわかにテンションあがって)おー。これ俺の背番号?
その封筒の中に、書いてあるから。
  封筒を開ける音。
おー、何?今日から?
今日から。
これだ。
(読んで)「125698843。」
いいねえ。何か、ちょっと嬉しいねえ。
あー。
反対してたけど、もらってみると、まんざらでもないねえ。何かやっぱ、番号もらえると、基本的に嬉しいんだな。人は。
受験票とか。
受験票とか。学生証とか。
あー。
いいねえ。こうなんか、日本人全員が、1つのチームみたいな。
アンタ、野球好きなだけじゃん。
お前、何番?
私は、(読んで)「87344568。」
お前、8ケタなんだ。
(得意げに)8ケタ。
何で俺、9ケタなんだよ。
知らないけど。
何これ。差別?
差別じゃないでしょう。
ちょっと、ちゃんとして、政府。っていうか俺遅くない?
え?
1億2千って、なんか、日本の人口ぐらいの番号だろう。
あー。なんかつける基準とかあんのかなあ。
……お前これ、シリアル少ないだろう。
ごめん、買い忘れてた。
買い忘れてたって、分かるだろう。残量で。
だから、忘れてたの。
あー……。ちゃんとして。お前も、政府も。
はーい。
大体、粉しかないじゃん。
……この番号って、どうしたらいいのかなあ。
あー。
覚えたりとか。
別に何か、使うことないだろう。こうなんか、どっかで誰かが管理してる、みたいな。そういうアレだから。
そっか。
そういう、性質の番号だから。それよりお前、何かないの。
ああ……。
シリアルに変わる、なんかシリアル的な……。
(思いついて)リッツは?
リッツお前、全然違うだろう。
一緒じゃん。
一緒ってことないだろう。クラッカーだろう。
牛乳かけたいの?
まあ、そういう感じだよ。
 

  平凡な会話が続いていく。


END。
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