447話(2004年10月22日 ON AIR)
「中継先の村上さん」
作/上田誠
 
  ニュース番組のジングル。
(キャスター)報道ラジオジャーナル、続いては、台風のニュースです。中継先の、村上さん?
  中継に行くジングル。
台風の中、女レポーターがしゃべっている。
台風中継独特のハイテンションで。
はい!現場の村上です!こちらもう、すごい風です!本当、すごい風なんです。もうビュンビュン!
今そこはどこですか?
(聞いてない)もうさっきから、立ってるだけでやっとの感じです!
村上さん?
雨ももう、叩きつける感じで、
今、そこはどこですか?
(何かを見て)もう、たくさん吹き飛んでます!
村上さん。
(興奮して)次から次へと……
どこかを、まず言っていただかないと、ラジオの中継なんで……
わーもう、どんどん吹き飛んでいってます!
何が飛んでるんですか?
ほーんとにもう、すごい風なんですよー!天が怒り狂ってるという表現がぴったりの!
表現とかはいいんで、村上さん。
ノアの箱舟があったら、乗せてほしい気分です!
どこですか?今そちらは。
もう何か、一度濡れたらもう、どうでもよくなって来ちゃいました!
ええ?
何か楽しい!非常に今、台風のせいか、気分が高揚してます!
村上さん。その、興奮してるのは分かりましたから、どこかをまず言っていただかないと。
波がすごい、逆巻いてますねえ。
波?
波が風で逆巻いてます!
海なんですかそこは?
サーフィンしたい!
村上さん?
ビッグウエンズデーでも来ちゃいそうな……。
その、あなたの感情は十分伝わってきましたから、そこは今、どこなんですか?
……は?
海なんですか?どこなんですか?
……すいません、ちょっと聞きとりづらいです!
(はっきりと)そこの、場所を、
(笑って)見てください。地元の方が!
村上さん!
あれはおそらく地元の方でしょうか、
見えないんでこちらからは。ラジオなんで。
(笑って)こんな台風だっていうのに、あんな。さすが、海の民という感じです!
そちらの状況が全然わかりません。
慣れてらっしゃいます!(笑って)うわー、よくこんな状況で。
何かやってらっしゃるんですか?地元の方が。
本当こっちすごいんですよー!もうびしょぬれです!
ちょっと全然、そちらの状況が伝わってこないんで。
あっちの方にも、はい。行ってみましょう!(走る息づかい)
どこ行ってるんですか?いい加減にしないと村上さん。
(勝手に感動している)うわー、ここはもう、うわー!
……どこで何してるのか、村上さん。
表現できない……。何とお伝えしていいのか……。
伝えないと、あなた報道でしょう?ジャーナルしてください、村上さん!
もう、さっきから、吹き飛ばされそうで…… あっ、取れちゃった!すいません。
何かとれたんですか。
ごめんなさい、取れちゃいました……(直している)
それは何か、台風情報とは関係ない感じですか。こっちサイドの話ですか。
(誰かが何かしてくれて)あっ、ありがとうございます!(笑って)地元の方がやさしいんです!(地元の人に)すいません……。
地元の方が何か、よくしてくれたんですか、ちょっと村上さん!村上!
はーい!
あなた、全然報道できてない!何にも、状況が伝わってこない!
ええ?
まず、どこにいるんですかあなたは。海なんですか。どこなんですか?
聞こえません!
台風は一体、どうなってるんですか。
全然聞こえません!もう本当、風がすごくて、聞いてください!行きますよ……
村上さん?
  暴風の音。
……村上さん!中継してください!放送事故ですよこれは。描写してください!状況を、伝達してください!




END
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