452話(2004年11月26日 ON AIR)
「ヘリコプターが近すぎてダジャレが聞き取りづらい」
作/上田 誠
 
  屋上の2人。
ヘリコプターが飛んでいる。
(見て)ヘリコプター。
(見て)ヘリだねえ。
  近づいてくる。
近いねえ。
(笑って)ヘリこんなに近いの珍しいよねえ。
ねえ。なんか……新鮮。
ヘリ間近でみることないもんねえ。
  さらに、近づく。
でけえー。
音すごいよねえ。
  もう、結構大声をださないと会話できないくらい。
……何やってんだろ。撮影?
何かねえ。撮ってるみたいな。
地上撮ってんのかなあ。
……(見て)カメラマンあっぶねー!
(笑って)あんなに体のりだすんだ。
落ちるだろうあれ。
(感心して)へぇー。
(思いついて、ちょっと小さめの声で)ヘリの、へりに。カメラマンが。
(聞き取れなくて)え?
……(大きい声で)ヘリの、へりに。カメラマンが。
  ちょうどプロペラの音が大きくなって、ダジャレがかき消される。
何?
いやほら、立ってんじゃん。カメラマンが。ヘリの、ヘリのとこに……。
  またもや、プロペラの音が大きくなって、かき消される。
(笑って)何、聞こえない。
いや、……もういいけどね。
ええ?
いや、そんな大したことでもないから……。
何、なんていったの?
いや、ダジャレをちょっとまあ、思いついたから、
ダジャレ?
なんか、言おうとするたびに、ヘリが近づいてくるからさあ。
何、聞きたい!
……(ためらいつつ)いやまあ、さらっと行きたかったんだけど。
うん。
ヘリが、……ヘリに。
  またもや、ちょうどかき消される。
これ、わざとだろう!
ええ?
わざとやってるもんだって。操縦士が。
何、聞こえないよ。
操縦士が、嫌がらせしてるもん。ダジャレを聞かせまいと。
(笑って)してないでしょう。
もういいよ。そんな、何回も言うほどのことでもないから。
いやいや、すっごい気になる。すっごい気になる。
ええ?
すっごい気になる。
……なんか、君の声だけ、よく聞こえるねえ。
うん。あんたの声聞こえにくいのよ。
なんかねえ。プロペラの音と、音域近いしさあ。……行くよ。
  男、タイミングを見計らう。
ヘリが、……。
  ヘリの音、すでにちょっと大きくなってきつつある。
もうほら、ちょっと大きくなってんじゃん!
なってないよ!
またこれ、かき消されるじゃん!




END。
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